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プレスリリース
銅微粒子の新たな有機物フリー合成技術を開発 ~水溶性卑金属塩を利用し、グリーンな合成手法を実現~

発表のポイント

・あらたに開発した有機物フリー銅粒子合成プロセス(銅前駆体※1湿式還元法※2)は、卑金属※3塩を利用し、水中、大気下、室温という極めて低環境負荷の条件において、銅微粒子の合成が可能である。
・有機物を使用する従来法に比べ、省資源・省エネルギー型の合成法である。
・合成した銅微粒子は、有機物を含まないため、焼成※4した際に極めてガス発生が少なく、次世代エレクトロニクスの導電材料としての応用が期待できる。

概要

 銅微粒子は金や銀といった貴金属※5微粒子よりも元素が豊富で安価ながら、貴金属類と同等の高い導電性と熱伝導性を有します。しかし既往の銅粒子合成法では各種の有機物が添加使用されており、その分解処理が必要でした。東北大学 多元物質科学研究所の蟹江澄志教授らと三井金属鉱業株式会社総合研究所の共同研究により、導電材料として期待される銅微粒子を環境に優しい条件(有機物フリー、水中、大気下、室温)で合成するプロセスを新たに開発しました。
 今回開発した合成法では、水溶性の卑金属塩を用いることで、銅微粒子の合成が可能です。得られた銅微粒子は、有機物を含有していないため、焼成した際に極めてガス発生量が少なく、また低温で焼結※6することを確認しました。
 本手法は、持続可能な社会の実現に向けた革新的な合成技術として期待できます。更には、高純度の金属微粒子の合成が可能であるため、これまでに無い新規機能を有する金属微粒子の創製が期待できます。
 なお、本成果は、12月20日(月)付で、nature.comが管理するオープンアクセス電子ジャーナル誌の「Scientific Reports」誌に掲載されました。 (DOI: 10.1038/s41598-021-03707-9)
プレスリリース本文(PDF)

詳細な説明

 銅微粒子は金や銀といった貴金属微粒子と比較して元素が豊富、かつ、安価ながら、貴金属類と同等の高い導電性と熱伝導性を有するため、触媒や化学センサー、エレクトロニクスといった様々な分野で盛んに研究されています。
 銅微粒子は表面活性が高いため、銅微粒子を合成する際に容易に酸化したり、凝集したりします。これらの現象を回避するために既往の銅粒子合成法では、各種の有機物が添加されてきました。添加された有機物は得られた銅微粒子に残存し、分解除去に高温での焼成が必要であること及びその際にガス発生量が多いという課題が有りました。このため、有機物を使用しない、新しい銅微粒子合成法が求められていました。
 東北大学および三井金属鉱業株式会社の共同研究では、水溶性卑金属塩を利用することで有機物を使用せず、水中、大気下、室温の環境に優しい条件で、銅微粒子を合成することに成功しました(図1)。
 この銅粒子は合成時に有機物を使用していないため、焼成時にガス発生量が少ないという特徴が有ります。簡易的に銅ペースト※7を作製すると200 ℃以下で銅粒子同士が焼結することを確認しました。 

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図1. 開発した銅微粒子合成法の特徴
(a):水溶性卑金属塩を利用した有機物フリー合成法、(b):既往の合成法
 

開発した銅粒子合成法では水溶性卑金属塩を少量添加することによりを銅微粒子が得られます(図2)。

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図2. 開発した銅粒子合成法での水溶性卑金属塩添加効果
(a):金属塩添加無しで合成した銅粒子
(b):金属塩を添加して合成した銅微粒子(水溶性卑金属塩濃度:0.0245 M)

 この銅粒子は合成時に有機物を使用していないため、焼成時のガス発生量が少ないことが分かりました。また、簡易的に銅ペーストを作製し焼結性を調査すると200 ℃以下で銅粒子同士が焼結することを確認しました(図3)。

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図3. 開発した銅微粒子のガス発生挙動と作製した評価用銅ペーストをN2雰囲気下で焼成した際の焼結状態
(a):熱重量分析※8結果(N2雰囲気)、(b):150 ℃×30 min. 焼成後の焼結状態
(c):200 ℃×30 min. 焼成後の焼結状態

 本取組は大気下、室温、水系、有機物不使用な低環境負荷での金属粒子合成技術の実現を目指した基礎研究であり、今後、実用化を検証して参ります。サンプル提供時期は未定です。
 
論文情報:
“A mild aqueous synthesis of ligand-free copper nanoparticles for low temperature sintering nanopastes with nickel salt assistance”
Hiroshi Imamura, Yoichi Kamikoriyama, Atsushi Muramatsu and Kiyoshi Kanie
Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-021-03707-9

用語説明:
※1.前駆体
化学反応において、生成物の前の段階にある物質。ある組成の粒子を合成する際の原料となる化合物のこと。

※2.湿式還元法
水溶液や非水溶液中で溶解、あるいは分散している金属化合物を還元剤により金属へと還元させる方法。還元剤や添加剤の種類、さらに各試薬の濃度を変更することで金属粒子の大きさや形状等を制御できる。

※3. 卑金属
空気中に放置すると酸化されやすい金属。一般的に貴金属ではない金属のことをさす。

※4.焼成
材料を加熱して性質に変化を生じさせる工程。

※5. 貴金属
金・銀・白金・イリジウムなどの産出量が少なく貴重な金属。空気中で酸化されにくく、かつ化学変化されにくい性質を持つ。

※6. 焼結
加熱した際に粒子と粒子の間に結合が生じる現象。

※7. 銅ペースト
有機溶媒中に銅粒子を主成分に、他に接着成分や無機物を分散させた粘性の高い流動体。食パンに塗るジャムやクリームの様な粘性を有する。

※8. 熱重量分析
試料を一定の速度で加熱、又は、一定の温度で保持した際の重量変化を測定する手法。

関連リンク:
東北大学ウェブサイト
三井金属鉱業株式会社
ハイブリッドナノシステム研究分野

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 
教授 蟹江 澄志(かにえ きよし)
電話:022-217-5165
E-mail:kanie*tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)