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プレスリリース
水を自由に出し入れする有機半導体スポンジの作製 ~水の吸脱着にともなう電子伝導度とイオン伝導度のスイッチング~

発表のポイント

・結晶構造を保持したまま水の可逆な出し入れが可能なn型有機半導体材料(注1)の作製に成功した。
・水に対して不安定であったn型有機半導体が、水の存在により優れた性能を示すことを見出した。
・水の出し入れに伴う電子伝導性とイオン伝導性のスイッチングに成功した。

概要

水の存在する場所で安定なデバイス動作を可能とする有機材料は極めて希です。東北大学多元物質科学研究所の大学院生 阿部春花氏、芥川智行教授、京都大学の関修平教授らの研究グループは、イオン性ナフタレンジイミド誘導体を用いて、有機結晶であるにもかかわらず堅牢な結晶格子を有するn型有機半導体材料を作製する事に成功しました。本材料は、水の存在下で高い電子移動度を示し、可逆な水の出し入れにより、電子伝導性とイオン伝導性のスイッチング現象を示しました。有機半導体に対する水の吸収が、その性能を向上させる従来材料とは逆の物性応答を示す興味深い材料の創製は、生体における水分のセンシングなど、有機エレクトロニクスの新たな応用の可能性を広げる研究結果です。
本研究の成果は米国現地時間の8月7日、学術誌ACS Applied Materials & Interfacesに掲載されました。
プレスリリース(本文)
 
20200820_press_release
図1 (K+)2(PCNDI2-)•n(H2O)の分子構造(上)と結晶構造(下)。結晶構造のb軸投影図とPCNDI2-が形成す二次元伝導層(左下)。伝導層間に存在するカチオン-アニオン静電ネットワークと水H2O分子の可逆的な吸脱着(左下)。

論文情報:
“Switching of Electron and Ion Conductions by Reversible H2O Sorption in n-Type Organic Semiconductor”
Haruka Abe, Ayumi Kawasaki, Takashi Takeda, Norihisa Hoshino, Wakana Matsuda, Shu Seki, and Tomoyuki Akutagawa
ACS Applied Materials & Interfaces
DOI:10.1021/acsami.0c09501

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東北大学

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担当:芥川 智行(あくたがわ ともゆき)
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E-mail:akutagawa*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
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電話:022-217-5198
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