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お知らせ
みやぎ県民大学2021を開催しました

 多元物質科学研究所では、2021年7月2日、9日、16日、30日、8月6日の5回にわたり、みやぎ県民大学開放講座「材料科学と素材製造プロセス」を開講しました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮して受講者数を制限し、感染対策を徹底して開催しました。
 社会で広く利用されている基盤材料は、高温プロセスを通して製造されていますが、その中身はいまだに未解明の領域がある小さな宇宙のようです。本講座では、その素材の製造プロセスや素材を利用して製造される様々な材料とその評価方法について、材料科学的な視点から解説しました。
 

 第1回講座「高温冶金プロセスのその場観察 -非金属介在物の不思議な振舞と凝固-」

  7月2日(金)の第1回講座では、材料分離プロセス研究分野の柴田浩幸教授が「高温冶金プロセスのその場観察-非金属介在物の不思議な振舞と凝固-」と題して講演し、18名が受講しました。
 鉄鉱石を高炉で還元してから鋼になるまでの製銑・製鋼プロセスにおいて、不純物を取り除く方法等について解説しました。非金属介在物の振舞については、その動きを動画を用いて紹介しました。講義の後半には、2019年度に完成した新棟にある研究室を訪問し、実際の研究に使用している装置を見学しました。

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材料分離プロセス研究分野(柴田浩幸研究室)
 

 第2回講座「元素の個性を知り、機能材料を設計、創製する」

 7月9日(金)の第2回講座では、原子空間制御プロセス研究分野の小俣孝久教授が「元素の個性を知り、機能材料を設計、創製する」と題して講演し、18名が受講しました。
 すでに実用化されている燃料電池の材料について、それぞれの発電効率、作動温度の違いを解説し、新たに開発している燃料電池の材料として、ガラス電解質について説明しました。また、人体や環境によくない影響のある物質については、その適性を活かして有効に活用できる可能性があることを、太陽電池の材料開発などの例を示して、わかりやすく紹介しました。

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原子空間制御プロセス研究分野(小俣孝久研究室)
 

 第3回講座「放射光を使って材料の機能を可視化する」

 7月16日(金)の第3回講座では、放射光可視化情報計測研究分野の高橋幸生教授が「放射光を使って材料の機能を可視化する」と題して講演し、19名が受講しました。
 放射光で主に使用されるX線を発生させるしくみから、かみ砕いてわかりやすく紐解き、2023年度の稼働を目指して青葉山キャンパスに建設がすすめられている次世代放射光施設については、既存の放射光施設と比較して解説しました。また、放射光を用いてどのように可視化されるのかについて、動画や画像を用いて紹介しました。受講者からは、「光のリングの中は真空ですか?」「どんな分野に利用できますか?」など、多くの質問がありました。

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放射光可視化情報計測研究分野(髙橋幸生研究室)
 

 第4回講座「身近な素材「鉄」の作り方とリサイクル」

 7月30日(金)の第4回講座では、基盤素材プロセッシング研究分野の植田滋教授が「身近な素材「鉄」の作り方とリサイクル」と題して講演し、21名が受講しました。
 製鉄法の進歩により高性能化している鉄鋼材料には様々な種類があり、強度を必要とされる部分には固い鉄、曲面などには加工しやすい柔らかい鉄、と目的に合わせて使用されていることについて、自動車や鉄塔など、実際の製品を例に挙げて紹介し、原料から製品になるまでのプロセスと、不純物を取り除く工夫について解説しました。また、資源に限りがあることや、スクラップの増加から促進されている、鉄鋼のリサイクルについては、不純物を取り除く技術開発が求められていることについて説明しました。受講者からは、「銑鉄にスクラップを混ぜるのですか?」など、具体的な質問がありました。

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基盤素材プロセッシング研究分野(植田滋研究室)
 

 第5回講座「資源・環境・エネルギー分野に貢献する触媒材料と化学プロセス」

 8月6日(金)の第5回講座では、金属機能設計研究分野の亀岡聡教授が「資源・環境・エネルギー分野に貢献する触媒材料と化学プロセス」と題して講演し、20名が受講しました。
 触媒とは何か?について、どんなものが触媒になり、何ができるのかなどの視点から解説しました。資源、エネルギー分野の触媒プロセスとして、農業肥料やガソリン燃料に利用された合成反応を例に挙げ、環境分野の触媒プロセスとしては、自動車の排ガス処理のプロセスを例として紹介しました。さらに、亀岡教授自身が研究を進めてきた触媒についてもお話ししました。受講者からは、高い活性などの機能が求められる触媒の「性能が劣化しますか?」などの質問がありました。

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金属機能設計研究分野(亀岡聡研究室)
 

 修了式

 8月6日の5回講座終了後には、修了式を行いました。多元物質科学研究所所長の寺内正己教授から「今回のテーマである材料科学と素材製造プロセスは、鉄など、私たちの身近にある様々な製品の材料についての内容でした。 ニュースなどで、環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)についてご覧になったときに、今回の講座を思い出していただけると嬉しいです。」と挨拶がありました。修了式では、4回以上受講した18名の受講者に修了証が授与される予定でしたが、今回は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮して郵送による授与とされました。

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関連リンク:みやぎ県民大学開放講座「材料科学と素材製造プロセス」開催案内

問い合わせ先

東北大学多元物質科学研究所 総務係
TEL: 022-217-5204