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所長あいさつ

所長あいさつ

多元物質科学研究所(以下多元研)の所長として2年目を迎えました福山博之です。この場をお借りして、多元研におけるWhat’s Newを皆様にご紹介いたします。

多元研は、「材料」「プロセス」「計測」の三つの研究軸がバランスよく融合した物質・材料分野で国内最大の大学附置研究所です。この三位一体の研究体制により、物質の設計・合成から評価・応用までを一貫して推進できる強みを活かし、昨年度は環境調和型プロセス・廃炉、次世代エネルギー材料、未来型医療など多岐にわたる分野で顕著な研究成果を挙げることができました。

戦略的人事および人材育成

本学がわが国初の国際卓越研究大学に認定されたことを受け、多元研では戦略的人事方針を策定し、国際的に卓越した研究者の選考を開始いたしました。この人事戦略では、今後5年間で現在の研究センターを発展的に改組し、現教員と国際卓越教員が協力して喫緊の社会課題の解決を目指す「課題解決型国際研究センター(案)」の設置を構想しています。本学は建学当時、「世界に劣らざる」研究をするという確固たる志でアインシュタイン博士の招聘を試みました。多元研ではその精神を受け継ぎ、卓越研究者を招聘して所内教員との共創によって知の創出を加速します。今年度なるべく早期に卓越研究者が着任できるように全所一体となってこのチャレンジングな構想の実現に向けて挑戦しています。

2024年度には、優秀な若手研究者が安定して研究に専念できる環境作りの一環として、テニュアトラック制度(准教授)を導入いたしました。これにより、将来を担う研究者が独創的な発想で挑戦的な研究に取り組める基盤が整いつつあります。

研究基盤の強化

運用開始から1年が経過した次世代放射光施設「ナノテラス」は、最先端の研究設備と高度な技術支援体制を備えた施設として、すでに多くの成果を生み出しています。多元研では今年度120時間の利用枠を確保します。所員の皆様には、ナノテラスを積極的に活用して、タイムリーに他と差別化できる優れた研究成果を出して欲しいと思います。

今年度、多元研と金属材料研究所が協力してハードとソフト両マテリアルの高度な構造解析・物性評価を目的とする「東北先端顕微鏡センター(TCEM)」を設置いたしました。本センターでは、クライオ電子顕微鏡を活用して、幅広いソフトマテリアル(タンパク質、高分子、有機複合材料)の原子・分子レベルでの構造解析を可能にしています。多元研内の「ソフトマテリアル研究センター」は、TCEMと連携し、クライオ電子顕微鏡を活用したソフトマテリアルの先端研究活動および社会実装を推進しています。ナノテラスとともに、東北大学が構想する「サイエンスパーク」の実現に積極的に貢献してまいります。

産学連携・共同研究の展開

産学連携においては、デクセリアルズ、日本電子(JEOL)、三井金属鉱業との共創研究所、および住友金属鉱山との共同研究部門が設置され、安定した信頼関係の基に活発な産学連携活動を展開しています。企業の実用化ニーズと当研究所の基礎研究力を融合させ、革新的な材料・デバイス開発や計測・分析技術の高度化に取り組んでいます。

また、多元研は日本を縦断する5つの研究所(北大電子研、東北大多元研、東京科学大化生研、阪大産研、九大先導研)から構成されるネットワーク型共同研究拠点及びアライアンス事業を行っています。アライアンス事業では、「人と知と物質で未来を創るクロスオーバーアライアンス」の本部として、物質・材料科学の新たな学術領域の開拓と社会実装に向けた共同研究を推進しています。

今後の展望

今年度は、上記の多様な取り組みをさらに発展させ、有機的に連携させることで、研究力の向上と異分野融合研究の促進に一層注力してまいります。また、本学のサイエンスパーク構想の実現に向けた取り組みを通じて、基礎研究の成果を社会実装へと橋渡しする活動も積極的に推進し、人類社会の持続的発展に貢献して参ります。

今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

2025年4月 多元物質科学研究所長 福山 博之

所長あいさつ|2024年4月