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プレスリリース
ケイ酸塩ガラスの熱伝導度の支配因子を解明 ―ガラス材料の熱伝導性設計指針―

国立大学法人東北大学

【多元研研究者情報】 材料分離プロセス研究分野  准教授 助永壮平、教授 柴田浩幸

【発表のポイント】

  • ケイ酸塩ガラスの熱伝導度は、ガラスの放熱性や断熱性を支配する重要な物性です。一方で、熱伝導度の評価には多大な労力を要します。また、ガラス組成と熱伝導度を結びつける理論が十分に確立されていないため、熱伝導度の理論的な推測も難しい点に課題がありました。
  • 本研究では、13種類のケイ酸塩ガラスを対象に調査を行い、音速と熱伝導度の間に比例関係があることを見出しました。
  • 音速に基づいて組成を検討することで、放熱性や断熱性に優れた新しいガラス材料の開発につながると期待されます。

【概要】

ケイ酸塩ガラスは、電子デバイスの基板材やスマートフォンのディスプレイなどに利用されています。熱伝導度はガラスの放熱性や断熱性に関わる重要な物性値です。一方で、熱伝導度の評価には、多大な労力を要するのが一般的で、測定データが限られていました。また、熱伝導度とガラスの組成を結びつける理論が十分に確立されていないため推測が難しい点にも課題がありました。

東北大学多元物質科学研究所の助永壮平准教授、柴田浩幸教授、同大学大学院工学研究科の小里文太大学院生(研究当時)は、組成の異なる13種類のケイ酸塩ガラスを作製し、熱伝導度や関連する様々な物性の評価を行いました。その結果、ケイ酸塩ガラスの熱伝導度は、熱物性の一つである音速と比例関係にあることが明らかになりました。

音速に基づいて組成を検討することで、放熱性や断熱性に優れた新しいガラス材料の開発が期待されます。

本研究の成果は、2026年9月30日に応用物理学分野の専門誌Applied Physics Lettersに掲載され、Featured ArticleおよびScilightに選出されました。

【詳細な説明】

研究の背景

ケイ酸塩ガラスは、電子デバイスの基板材やスマートフォンのディスプレイなどに利用されています。熱伝導度はガラスの放熱性や断熱性に関わる重要な物性値です。一方で、熱伝導度の評価には、多大な労力を要するのが一般的で、測定データが限られています。二酸化ケイ素を主成分とするケイ酸塩ガラスの熱伝導度は、「容積比熱(注1)、音速 と フォノン(注2) の平均自由行程の積」と相関があることが知られていました。一方で、ガラスの組成を調整することで、これらの3つの熱物性パラメータを独立に制御できるのか、パラメータが相互に影響し合うのかは不明でした。ケイ酸塩ガラスの熱伝導度を設計する場合に、どの熱物性パラメータに注目して組成を選定すれば良いかがわからない点に課題がありました。

今回の取り組み

本研究では、組成の異なる13種類のケイ酸塩ガラスを作製し、室温における試料の熱伝導度、音速、容積比熱およびフォノンの平均自由行程の相関関係を調査しました。その結果、同比熱とフォノンの平均自由行程にはトレードオフの関係があり、これらの2つのパラメータの積はいずれの組成でもおおよそ一定となることが明らかになりました (図1(左))。フォノンの平均自由行程は、準粒子同士が衝突するまで進む平均距離を意味しており、比熱がフォノン(準粒子)の数と関係しているため、図1の関係は妥当と言えます。また、熱伝導度は音速と比例関係にあることがわかりました (図1(右))。本研究は、ケイ酸塩ガラスの熱伝導度を主に音速が支配していることを明らかにしました。

今後の展開

熱伝導度と音速の比例関係が、ケイ酸塩以外の組成系に適用可能であるか、異なる温度域でも成立するかについて調査を進める予定です。また、本研究で得られた知見を活用することで、「電子デバイス等で利用できる放熱性に優れたガラス」や「建物の窓材等で期待される断熱性ガラス」の開発につなげていきたいと考えています。

図1. (左) 室温におけるケイ酸塩ガラスの容積比熱とフォノンの平均自由行程の関係の模式図 (右) 室温におけるケイ酸塩ガラスの熱伝導度と音速の関係の模式図  (Reproduced with permission from Appl. Phys. Lett., (2026). Copyright 2026, American Institute of Physics.)

【謝辞】

本研究はJSPS科研費(JP24K01153)、日本板硝子材料工学助成会、日本鉄鋼協会 研究会I (溶融酸化物の熱伝導度計測高精度化) および「人と知と物質で未来を創るクロスオーバーアライアンス」(文部科学省) の支援を受けて実施されました。

【用語説明】

注1.容積比熱:単位体積あたりの比熱

注2.フォノン:原子振動を量子化した準粒子のこと

【論文情報】

“Dominant role of sound velocity in the thermal conductivity of silicate glasses”
Sohei Sukenaga*, Bunta Ozato, and Hiroyuki Shibata
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 准教授 助永壮平
Applied Physics Letters
DOI:10.1063/5.0351403
Scilight URL: https://doi.org/10.1063/10.0046843

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 助永 壮平(すけなが そうへい)
TEL: 022-217-5155
Email: sohei.sukenaga.d3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)