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プレスリリース
窒素を含む環状有機化合物を細胞内で構築可能な新たな光反応を開発 ~薬の効果を光制御するツールとしての応用に期待~

岡山大学
東北大学

【多元研研究者情報】生命機能分子合成化学研究分野 教授 永次史

◆発表のポイント

  • 光照射によって、生体条件下でもアミジニルラジカル(反応性の高い窒素含有分子)を発生させ、医薬品にも見られる複雑な構造であるアミノフェナントリジン骨格を構築する新たな光化学反応の開発に成功しました。
  • 本光反応は細胞内でも進行することから、生物活性分子を必要な場所と時間で直接合成する「その場合成」による生命現象の時空間的制御や、副作用の少ない治療法の開発への応用が期待されます。

岡山大学学術研究院医歯薬学域の岡村秀紀助教と東北大学多元物質科学研究所の永次史教授らの共同研究グループは、o-ニトロベラトリルアミドキシムエーテルからアミジニルラジカルを光誘起的に生成し、水系条件下にてアミノフェナントリジン化合物を合成できる新たな光化学反応を開発しました。また、この光反応を細胞内環境へ応用し、光照射によって蛍光を発するフェナントリジン誘導体を生細胞内で合成できることを実証しました。

アミノフェナントリジン骨格は、医薬品をはじめとする化合物に見られる重要な分子構造であり、本手法は薬理活性分子を細胞内で自在に構築し、その機能を時空間的に制御する新たな手法につながると期待されます。

これらの研究成果は6月22日、米国化学会の学術雑誌The Journal of Organic Chemistryにオンライン掲載され、雑誌のFront Cover Artにも選出されました。

■発表内容

<現状>

特定の化学反応を任意の場所とタイミングで制御する手法は、生命科学やバイオテクノロジーをはじめとする幅広い分野で強く求められています。その有力な手段の一つが、光によって誘起される化学反応です。特に、光化学反応を利用して薬剤などの機能性分子を生体内で制御する技術は、生命現象の解明に有用であるとともに、薬理作用を時空間的に制御することで副作用の少ない治療法の開発につながる点から注目されています。しかしながら、生体応用が可能な光化学反応の種類は依然として限られており、そのレパートリーの拡充が強く望まれています。

<研究成果の内容>

本研究では、薬物分子に多く見られる含窒素芳香族複素環を、生体条件下で構築可能な新たな光化学反応の開発に成功しました。具体的には、o-ニトロベラトリル基を結合させたビアリールアミドキシム化合物に405 nmの近可視光を照射することで、含窒素芳香族複素環の一種であるアミノフェナントリジン骨格を構築できることを明らかにしました(図1)。本反応では、光照射によってo-ニトロベラトリル基とアミドキシム間の窒素-酸素(N-O)結合が開裂し、高反応性のアミジニルラジカルが生成します。このアミジニルラジカルは隣接する芳香環と速やかに分子内環化反応を起こし、アミノフェナントリジン化合物を与えます。

アミジニルラジカルの生成法やアミノフェナントリジン合成についてはこれまでにも報告例がありますが、本研究で開発した手法は、(1)水を含む生体適合的条件下で進行すること、(2)光触媒などの添加剤を必要としないこと、を特徴としています。これらの特性から、生体環境での応用が可能であると考えられます。そこで本反応の生体応用を検証するため、蛍光分子の細胞内光構築を試みました。蛍光性を示さない前駆体Aを細胞に導入し光照射を行うことで、環化反応により蛍光性を有するアミノフェナントリジン誘導体Bが細胞内で生成されるかを評価しました(図2、図3)。その結果、光照射後に明確な蛍光シグナルが検出され、細胞内において本光反応が進行することが確認されました。

<社会的な意義>

本研究は、新たな光化学反応の開発という観点から有機化学分野に貢献するとともに、今後の光化学反応や光化学ツールの開発につながることが期待されます。また、本研究で開発した光誘起型分子内環化反応は、生命現象の解明を目指すケミカルバイオロジーや、薬物の時空間制御を志向する光薬理学分野において有用な手法となると考えられます。本光反応のさらなる改良・展開により、薬剤をはじめとする機能性分子の生体内光制御が可能となり、光を利用した新しい治療法の創出への貢献が期待されます。

研究資金

本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(若手研究21K14749, 基盤研究(C) 23K04957)、旭硝子財団、稲盛財団、豊田理化学研究所の支援を受けて実施しました。

 

論文情報

“Photo-triggered formation of an amidinyl radical from o-nitroveratril amidoxime and its intramolecular cyclization in aqueous media”
Hidenori Okamura, Yui Kaneyama, Kenshin Norizuki, Kouki Sakata, Steven William, Fumi Nagatsugi
The Journal of Organic Chemistry
DOI:https://doi.org/10.1021/acs.joc.6c00193

 

問い合わせ先

岡山大学学術研究院医歯薬学域(薬)
助教 岡村 秀紀
(電話番号)086-251-7933
(メール)h-okamura*okayama-u.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学多元物質科学研究所
教授 永次 史
(電話番号)022-217-5633
(メール)fumi.nagatsugi.b8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関するお問い合わせ>
岡山大学総務部広報課
(メール)www-adm*adm.okayama-u.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
(メール)press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)