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プレスリリース
水の中で組み上がる超分子でほぼ完全な光反応制御を達成 ハイブリッドナノリボンを利用した超分子光反応で合成困難なH-H型二量体のほぼ完全な合成に成功

発表のポイント


・水の中で二本鎖型界面活性剤とケイ素化合物が自発的に作るナノリボンを利用した初めての超分子光反応を実現
・立体的にも静電的にも反発の大きいHead-to-Head型光二量体を97%以上の選択性で合成に成功
・クリーンな光を用い、水中で自己集合により形成される超分子を用いた環境調和型の有益な反応で、今後のSDGsへの貢献が期待される
 

概要


 光を利用して化合物を合成する光反応は、自然への負荷が少ない環境調和型の反応であり有用とされてきましたが、実用化には至っていませんでした。今回、水中で酒石酸と二本鎖型界面活性剤を混ぜるだけで組み上がる螺旋型ナノリボン集合体をケイ素化合物でラップしたハイブリッドナノリボン集合体を利用し、水中に光反応の原料を加えるだけで集合体に非常に規則正しく取込まれること、さらに弱い光を当てるだけで、とても早く反応が進行し、普通の反応では合成が極めて困難なHead-to-Head型光二量体を97%以上の選択性で合成出来ることを明らかとしました。
 本研究は東北大学多元物質科学研究所 和田健彦教授とUniversité de Bordeaux Reiko Oda教授らの研究グループの国際共同研究により行われ、東北大学大学院理学研究科とUniversité de Bordeauxとのダブル・デグリー博士課程学生プログラムの成果です。本研究成果は2020年9月7日発行の英国化学会誌 Chemical Communications に掲載されました。本研究は、科学研究費助成事業ならびに物質・デバイス共同研究拠点とダイナミックアライアンス事業、そして(公財)佐藤陽国際奨学財団の支援を受けて、実施されました。
プレスリリース本文(PDF)
 

概念図

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論文情報:
“Near perfect head-to-head selectivity on the supramolecular photocyclodimerisation of 2-anthracenecarboxylate with self-organised gemini surfactant bilayers”
Wijak Yospanya,a,b Masaki Nishijima,b Yasuyuki Araki,b Thierry Buffeteau,c Emilie Pouget,a Takehiko Wada*b and Reiko Oda*a
a: Institute of Chemistry & Biology of Membranes & Nanoobjects (UMR5248 CBMN), CNRS – Université de Bordeaux – Bordeaux INP, 2 rue Robert Escarpit, 33607 Pessac, France
b: Institute of Multidisciplinary Research for Advanced Materials, Tohoku University, 2-1-1, Katahira, Aoba-ku, Sendai 980-8577, Japan
c Institut des Sciences Moléculaires (UMR5255 ISM), CNRS – Université de Bordeaux, 351 Cours de la Libération, 33405 Talence, France
RSC Chemical Communications(2020年9月7日発行)
DOI:https://doi.org/10.1039/D0CC04198J
 
関連リンク:
東北大学
生命機能制御物質化学研究分野(和田健彦研究室)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
担当:和田 健彦(わだ たけひこ)
電話:022-217-5608
E-mail:hiko*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)