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プレスリリース
効率的なナノ薬剤が薬効を示すまでの道のりを解明 ~細胞内でのナノ・プロドラッグを検出する方法の確立を通して~

発表のポイント

・がん組織周辺の血管内皮の隙間に効率よく抗がん剤を届けるナノ薬剤のがん細胞内外における薬物動態を初めて解明。
・高密度ナノ・プロドラッグは、上市薬と比較して約10倍高い薬理効果を示す。
・今後、未被覆型ナノ・プロドラッグの実用化に向けての臨床研究の進展が期待される。

概要

粒径200 nm以下にサイズ制御したナノ薬剤をがん病巣へ効率的に集積させる研究が活発に行われています。東北大学多元物質科学研究所の笠井均教授らのグループと北海道大学電子科学研究所、KU Leuvenの雲林院宏教授らのグループは、従来型ポリマーキャリア系ナノドラッグに比べて、高密度であることを特徴とする抗がん性ナノ・プロドラッグは、生体内実験において上市薬の薬効より約10倍高いことを報告済ですが、生体内における挙動は明らかになっていませんでした。今回の共同研究では、FRET(フェルスター共鳴エネルギー移動)による蛍光波長の変化を利用した顕微鏡観察により、これまで困難であったナノ・プロドラッグのがん細胞近傍や細胞内における動態、特に、細胞内においてナノ粒子状態から溶解状態へ至る過程を明らかにすることに成功し、ナノ・プロドラッグによる抗がん治療の臨床応用に向けて大きく歩を進めることができました。
本研究の成果は、8月12日に、英国の王立化学会の科学誌であるNanoscale(電子版)に掲載されました。
プレスリリース本文(PDF)
20200820_press_release_kasai
図1. FRETによるナノ・プロドラッグの細胞内動態の解析

論文情報:
“FRET-based intracellular investigation of nanoprodrugs toward highly efficient anticancer drug delivery”
Farsai Taemaitree, Beatrice Fortuni, Yoshitaka Koseki, Eduard Fron, Susana Rocha, Johan Hofkens, Hiroshi Uji-i, Tomoko Inose, Hitoshi Kasai
Nanoscale
DOI:10.1039/D0NR04910G

関連リンク:
東北大学
有機・バイオナノ材料研究分野(笠井研究室)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 笠井 均(かさい ひとし)
電話:022-217-5612
E-mail:kasai*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 
広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)