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プレスリリース
スピン凍結状態における記憶効果とエネルギー構造 ~乱雑さに刻み込まれた「記憶」からエネルギーランドスケープを探る~

東北大学多元物質科学研究所佐藤卓教授グループ、バージニア大学リー教授グループ、テネシー大学ツォウ助教グループらは共同でスピン凍結状態中の記憶効果を詳細に調べる事によりフラストレート磁性体の示すスピンの凍結状態がランダム系のスピングラス状態とは本質的に異なるエネルギー構造を持つことを明らかにしました。

ランダム相互作用を持つ磁性体において磁気モーメント(スピン)が低温でランダムに凍結する現象(スピングラス)は古くから知られていました。一方で、磁気モーメント間の相互作用がフラストレートする磁性体においても低温でスピン凍結が見られることが近年の研究によって明らかになっていました。本研究では、両者の凍結状態における記憶効果を磁気測定および数値シミュレーションにより詳細に調べる事により、両者のエネルギーランドスケープの複雑さに本質的な違いが存在することを明らかにしました。複雑なエネルギーランドスケープは磁性体のみならず、窓ガラスにはじまり社会現象にまで広く見られるものであり、本研究で切り拓かれた記憶効果を用いたエネルギーランドスケープ研究はこれらの対象の研究に対しても新しい手法を提供するものとして期待されます。
プレスリリース本文 (PDF)

tohokuuniv-press20161003

(左)ランダム磁性体と(右)フラストレート磁性体の模式図

論文情報
“Aging, memory, and nonhierarchical energy landscape of spin jam.”
A. M. Samarakoon, T. J. Sato, T. Chen, G-W. Chern, J. Yang, I. Klich, R. Sinclair, H. D. Zhou, S.-H. Lee,
Proceedings of the National Academy of Sciences of U.S.A., vol.113 no.42, published online 18 Oct 2016.
doi: 10.1073/pnas.1608057113

Link:
佐藤卓研究室(スピン量子物性研究分野)
東北大学ウェブサイト

 

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