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お知らせ
みやぎ県民大学2022を開催しました

 多元物質科学研究所では、2022年7月1日、8日、15日、22日、29日、8月5日の6回にわたり、みやぎ県民大学開放講座「無機材料の合成と機能」を開講しました。
 金属やセラミックスなどに代表される無機材料は社会に広く利用されており、持続可能社会においても重要な役割を担うと期待されています。本講座では、それら無機材料の機能や特性制御、合成プロセス、新物質開拓、評価方法について材料科学的な視点から解説しました。


開講式

 第1回目の講座に先立ち開講式を行いました。多元研所長の寺内正己教授から、「講義を受けて疑問に思ったことがあれば、何でも質問して下さい。」と挨拶がありました。

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第1回講座「クリーン水素製造のための無機材料」

 7月1日(金)の第1回講座では、物質変換無機材料研究分野の加藤英樹教授が「クリーン水素製造のための無機材料」と題して講演し、21名が受講しました。
 私たちのくらしや産業、社会生活に欠かせない電気などのエネルギーは、その資源を石油や石炭などの化石燃料に大きく依存していますが、化石燃料は枯渇や環境の問題が懸念されています。講座では、再生可能なエネルギー資源の代表である太陽光を効率的に利用して、水から水素と酸素を作ることができる無機材料「光触媒」についてお話ししました。光触媒とはどんなものか、その作用の原理や発見の歴史、エネルギー以外への利用実績、課題や今後の展望などについて詳しく解説しました。

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物質変換無機材料研究分野(加藤英樹研究室)


第2回講座「熱と電気を変換する半導体材料(熱電材料)の基礎と応用」

 7月8日(金)の第2回講座では、無機固体材料化学研究分野の山田高広教授が「熱と電気を変換する半導体材料(熱電材料)の基礎と応用」と題して講演し、17名が受講しました。
 熱電材料には、熱(温度差)による発電や、電流を流すことによって温度差を発生させる機能があります。私たちの身の回りで実用化されている例としては、暑い夏に利用している方も多いウェアラブル型クーラーなどがあります。また、熱と電気エネルギーを直接変換できる機能を活かして、焼却炉や工場などの排熱から発電する実証実験もすすめられています。本講座では、熱電材料の機能の原理と応用例について、その発見の歴史を交えて分かりやすく解説しました。さらに、熱電材料を手で温めて温度差を生じさせて発電することを確認したり、電流を流した熱電材料に触れて発生する温度差を体感しました。

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無機固体材料化学研究分野(山田高広研究室)


第3回講座「中性子散乱による物質材料研究」

 7月15日(金)の第3回講座では、スピン量子物性研究分野の佐藤卓教授が「中性子散乱による物質材料研究」と題して講演し16名が受講しました。
 物質をつくる、それ以上分割できないものが原子です。原子は原子核と電子から構成されますが、原子核を構成する、電荷が無くてスピンをもつ粒子が中性子です。講座では、中性子とはどんなものなのか、その特性や発見の歴史を紹介しました。水素やリチウムのような軽元素や電子スピンを直接観測することができる中性子散乱の実験は、どのような施設で行われているのか、実験装置の構造や観測の方法、さらには、X線回折などとの違いについても分かりやすく解説しました。トポロジーを用いた最新の研究についても触れました。

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スピン量子物性研究分野(佐藤卓研究室)


第4回講座「ナトリウムがもたらす無機結晶の世界」

 7月22日(金)の第4回講座では、無機固体材料合成研究分野の山根久典教授が「ナトリウムがもたらす無機結晶の世界」と題して講演し、19名が受講しました。
 無機化合物の合成に安定して利用できる元素は76種類あります。そのうち2種類の元素の組み合わせで得られる無機化合物の多くについては、組成や結晶構造、特性などが明らかにされています。これに対し、3種類以上の多元素の組み合わせは未開拓の領域です。本講座では、無機化合物の結晶構造を調べるために欠かせない単結晶の作製方法として、ナトリウムをフラックスに用いた方法を解説しました。この方法で合成された多元素からなる様々な金属窒化物やその関連化合物を紹介し、それらの結晶構造の特徴を説明しました。また、融液からの結晶成長が困難な窒化ガリウム単結晶も、ナトリウムを用いると工業的に実現が可能な温度と圧力条件で育成できることや、その発見の経緯をお話しました。

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無機固体材料合成研究分野(山根久典研究室)


第5回講座「ソフトケミカルプロセスによる環境応答機能材料」

 7月29日(金)の第5回講座では、環境無機材料化学研究分野の殷澍教授が「ソフトケミカルプロセスによる環境応答機能材料」と題して講演し、20名が受講しました。
 環境にやさしい機能性材料のプロセスデザインと、材料の形態・組成・サイズを制御して環境に応答する機能性を発現させる合成方法やその応用について解説しました。赤外線を遮蔽して、冬は暖かく夏は涼しく過ごすせるスマートウィンドウや、安全性が高くかつ自然な色合いの日焼け止め化粧品の材料、温熱治療に用いる医療材料への応用など、人と環境にやさしい材料開発について、実例を挙げて紹介しました。

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環境無機材料化学研究分野(殷澍研究室)


第6回講座「超高温材料科学への誘い」

 8月5日(金)の第5回講座では、高温材料物理化学研究分野の福山博之教授が「超高温材料科学への誘い」と題して講演し、17名が受講しました。
 航空機のエンジンや発電用のタービンなどに用いられる超高温耐熱性の材料開発には、先端的な計測技術が必要不可欠です。本講座では、耐熱材料の例や開発の歴史、物質の密度や表面張力、熱伝導率などの物性を計測する技術について、図や動画を交えて分かりやすく解説しました。講座の後半には研究室を訪問し、安達正芳講師の説明を受けながら、電磁力で試料を加熱し浮遊させて、その密度や表面張力、熱容量、熱伝導率などの物性を計測することができる計測システムを見学しました。

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高温材料物理化学研究分野(福山博之研究室)


閉講式

 8月5日の第6回講座終了後には、1930年に建てられ、2021年には登録有形文化財に指定された「多元研南1号館」のエントランスホールにて、閉講式を行いました。多元物質科学研究所所長の寺内正己教授から「多元研ではみやぎ県民大学のような活動を継続していくので、ぜひまた参加して下さい」と挨拶があり、副研究所長の福山博之教授から、5回以上受講した17名の受講者に修了証が授与されました。

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みやぎ県民大学は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮して受講者数を制限し、感染対策を徹底したうえで開催しました。
みやぎ県民大学開放講座「材料科学と素材製造プロセス」開催案内
       

問い合わせ先

東北大学多元物質科学研究所 総務係
TEL: 022-217-5204