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新旧所長対談 

新旧所長対談 

 ■ 所長、副所長とPIの両立は無理

小俣国際卓越のKPIに全員PIがあるという話題が出ましたが、所長とPIの両立には、ご苦労が多かったんじゃないかなと思います。
寺内所長とPIは無理です。一番困ったのは、論文が査読から戻ってきて、その返事を書くときですね。所長をやっていると時間が細切れになってまとまった時間が取れないので、じっくりと読めないんですよ。所長とPIは難しいと思います。自分の論文については、年1報は書くのがノルマだと決めていて、平均的にはできていたと思います。最近は共同研究者が書いてくれるので、共著を含めると論文数自体はそんなに落ちてない。所長になってから少し増えてるかもしれないです。

僕は所長をやっている間も、自分で実験したデータで学会発表していたんです。お盆と正月と5月の連休に実験してた。最近はさすがに息切れしてきたかな。今年は正月と2月に少し実験して、それからは実験できていない。明後日発表なので、今からスライド作らないと(笑)。
小俣居室が同じフロアにあるので、土曜日や大型連休にお会いしていたのですが、最近はお会いしなくなりましたね。
寺内土曜日も来てはいるんです。以前は実験室に行っていたのですが、最近は部屋から出ないで事務仕事してるから会わないんですね。4月から企業との共創研究所が立ち上がるので、もう科研費とかを考えるのはやめて、共同研究を一生懸命にやって論文を出したいと思ってます。
小俣福山先生は、副所長とPIとの両立はいかがでしたか?
福山寺内先生が個人操業されているのに比べると、うちは大塚先生と安達先生と長期でいてくれる実験補助の派遣の方とで、実際の細かいところはまわしていました。大きな方針は相談して決めるんですけど、自分で手を動かすことがどんどん減って、今はもう皆無です。寺内先生みたいには出来ない。
小俣4月以降はどんなイメージでしょうか?
寺内福山先生の研究室は、事務部棟に近いからいいよね。科研棟からだと片道5分かかるんですよ。
福山ありがたいことに、歩いて10数歩の距離です。寺内先生は、所長室にどのくらいいらっしゃいました?
寺内ほとんど居ました。所長になった時から、事務の始業時間に合わせて8時半に来るようにしたんです。ちょうど渋滞する時間に来ることになってロスが増えたけど、ちゃんと居た方がいいと思って。

研究室には、お昼休みとか打合せでちょっと戻るぐらいで、基本的には所長室に居るようにしていました。ただ、最近は事務処理の半分くらいがオンラインで出来るようになったので、研究室に居てできる事務仕事がかなり増えていますよ。
小俣所長室の明かりがついているのを見て、所長に相談しに行く、という話を聞いたことがあります。
寺内それは僕も聞いたことがあります。居るだけで役に立つことがあるんだなと思って、事務のスタート時間に合わせてここに来て、出来るだけ居るようにしていました。
小俣福山先生は、どんなプランですか?
福山ノープランです。今は、所長業務にプライオリティを置いていて、エフォートとかは全然考えていない。研究室の運営は、今もやっている毎朝のミーティングを継続しながらやろうかなと思ってます。事務の人と相談して時間のやりくりを考えます。試運転の間は所長業にウエイトを置いて、慣れてきたらうまく時間を活用できるといいですね。

今は研究室の秘書さんとGoogleカレンダーをシェアしているんですが、そこに書き忘れて、「あっ!」てなる事があるんです。メールで会議日程を受け取って、後で書こうと思ってるうちに忘れてしまう。
寺内会議の開催通知メールって、後から探すの大変じゃないですか?オンライン会議のURLはどこだっけ?って。オンライン会議が続く日があるんですが、秘書の方がURLを順番にクリックすると会議に参加できるようにまとめてくれるのが、とても助かりました。

所長をやっている間、研究室は人がいなくて大変だから、予算的に少しだけでも楽になるように、研究室秘書の人件費を研究所で持つくらいのことは、やってもいいんじゃないかな?

 ■ 研究以外のことでの役目を果たせたんじゃないかな

小俣寺内先生、所長を経験してよかったと思うことを教えてください。
寺内ひとつは、多元研全体を深く知ることができたことかな。多元研は研究分野も建物も広いので、他の先生方を知る機会があまりなかったんです。所長になると、来訪者に向けて多元研はこういう研究所でこんな研究をやっていますよってプレゼンする仕事が定期的にあるんです。そうすると、どの先生がどんな成果を出しているのかがよく分かるんですよ。所長になって初めて、多元研の先生方といろいろな話をしました。所長にならなかったら、そういう経験はできなかったと思う。

もうひとつは、研究以外で「これをやった」と言えることができたこと。僕は東北大卒で、師事する先生から研究室を引き継いだので、ずっとここにいたんですよ。インフラも既にあったものをほぼそのまま使えた。でも外から来る先生は、研究室を立ち上げて、装置を持って来て、いろいろ大変ですよね。そういう意味で、自分は楽してるなと思っていました。楽している分、研究以外のことで、研究所の活動に余計に時間を掛けないといけないんだろうなと。所長としてよかったかどうかの評価は分かれると思いますが、少し役目を果たせたんじゃないかな。
小俣そういう意味では、福山先生は、外から来られて研究室も立ち上げて、9年間の副所長を経て所長になられますね。
寺内もう、福山先生に頼まれたら誰も文句言えませんよね。ワイルドカードを持っているようなものです。

 ■ 全てが多元研の研究力の最大化に繋がるように

小俣福山先生、新所長として所信表明をお願いします。
福山ポイントは、全てが多元研の研究力の最大化に繋がるようにするということです。

産学連携に関しては、共創研究所と共同研究部門が、企業との長期的な連携あるいは信頼関係を築くうえで非常に大事になっています。今後は、複数対複数の産学連携も増やしていきたいですね。

附置研のネットワーク拠点/アライアンス活動については、2010年の発足から14年続いていて、ずっとS評価を得ていますし、3期目に入った今期は、初めて継続経費に加えてプラスアルファの予算が付きました。費用対効果を考えると運営のスリム化が必要ですが、文科省や大学本部からも評価されるようになってきたので、活かしていきたいですね。5つの附置研究所が参画しているので、シナジー効果が出るような仕組みを、URAの人が一生懸命考えてくれています。共同研究は、さあやりましょうと言ってできるものじゃないので、なかなか難しいかもしれませんが、そういう機会を活かして、発展していくことを期待しています。

国際交流に関しては、多元研が中心となってやっている協定校との交流を継続したいですね。ただ単に楽しいだけじゃなくて、海外との共著論文数の増加やコミュニティの拡張など、研究にフィードバックをかけて成果が出るように持っていきたいです。

研究者だけでなく事務系や技術系の人たちが、仕事をしている充実感が味わえるような雰囲気づくりも大事なことですね。若い教員に負荷がかかるような事はしたくないですし、コロナや世の中の風潮もあって急には出来ないと思いますが、少しずつ横の交流もできるようになるといいなと思っています。楽しい方がいいでしょ?いろんな不平不満があったとしても、多元研という組織の下で気持ちがひとつになれたらいいなって思っています。
小俣福山先生から寺内先生にねぎらいの言葉をお願いします。
福山これまでの経緯など知らないこともあるので、しばらくは相談させていただきながらすすめたいと思っています。特にSRISとソフトマテリアル、電子顕微鏡関連については、ご意見を伺わせてください。
小俣寺内先生からも新所長の福山先生へメッセージをお願いします。
寺内何も心配していません!
小俣今日は長い時間、どうもありがとうございました。

(左から)福山博之教授、寺内正己教授、小俣孝久教授、所長室にて。所長室は、あまり風通しがよくないので、夏はすごく暑くなるんです。
植物を持って来てもほとんど枯れてしまうんだけど、蘭だけは咲くんですよ。今年のお正月に持って来た蘭がまだ咲いていますね。(寺内)

 取材日:2024年3月18日
 取材場所:東北大学多元物質科学研究所 所長室