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新旧所長対談 

新旧所長対談 

 ■ URAと事務と、がっちりタッグを組んでやっていきたい

小俣所長の立場から見て、多元研の弱い部分はどんなことですか?
寺内URAですね。僕が所長になった当時はURAがいなくて、拠点/アライアンス活動の運営も、教員が研究時間を潰してやってたんです。他部局から異動してきた事務部長から、他の部局はURAを雇用していると聞いて、拠点/アライアンスでURAを雇用しました。

多元研としても、去年初めて雇用しました。JASIS展への出展やオンライン講演会の開催など、外部と繋ごうと試みてくれましたね。こちら側が受け身でいたので、どう活かすかというところまでは踏み込めなかったのですが、個人ベースで考えてどんどん動いてくれて、多元研に可能性を見せてくれたと思います。
小俣URAについて、福山先生はどのようにお考えですか?
福山外部資金獲得や産学連携イベントについては、それ自体がメインになってしまって、教員の負荷が増すだけになっていることを危惧していました。
寺内片平まつりみたいなものもその1つですね。そういう1つ1つが、少しずつ研究時間を削っている。少し整理してもいいんだろうなっていう気もしますね。
福山多元研は研究所ですから、「研究成果で社会に貢献する」という基本軸にすべてのファンクションを集約したい。教員のマンパワーを、研究そのもの、論文執筆そのものに割けるように、すべてが繋がっていくようにしたいです。そういう意味で、優秀なURAの人に入っていただくのが大事ですね。いい人を採用してやっていきたいと思います。
小俣学内の事務仕事に割かれる時間もかなりありますよね。
寺内海外の研究者に「事務仕事が多すぎて大変なんだ」と話したら、自分のところも同じだと言われました。どこもそうなんだと思うんです。ただ、本当に必要なの?というような事務仕事は、研究者はいい具合にスルーしているようです。やる人はルーティン化していて、やらない人はスルーする、健全な状態だと思います。首根っこ押さえ付けて「絶対やれ」とまでは言わないので、それでいいんじゃないのかな。
小俣「多元研愛」を持っている教員が多いと思うのですが、事務の方とも気持ちが通じるといいのになって思うことがあるんです。
寺内事務の方は定期的に異動しますし、非常勤の方は定期的に入れ替わってしまうのでそういう印象があるかもしれませんね。
小俣非常勤の方をみなさん常勤にする訳にもいかないですしね。
寺内もっと減らせと言われていますからね。
小俣福山先生は、事務部と教員の関係性についてお考えはありますか?
福山多元研の事務は、ここ10年くらい辛い目にあっていたと思います。最初は、拠点/アライアンスの業務が入ったとき。URAが入って改善されましたが、とても大変な時期を経験しています。SRISは、本部からのサポートがあるとはいえ、多元研の事務が会議も両方カバーしているので、2部局分やっている状態。内実は分かりませんが、傍で見ていて大変な部局だなと思っていました。

個人的には、事務にはとてもよくサポートしていただいていると思っています。三役会議を通して見ていてもとてもよく協力してくれていますし、多元研をよくしていこうという雰囲気を感じています。普段、事務の人たちは遠慮して控えていらっしゃるんですけど、いろいろ提案してもらったり、事務的に辛いと指摘してもらったり、もっと意見交換ができればいいなと思っています。
寺内三役会議でも、事務からの項目を作ればいいんですよね。毎回、三役と同じように事務の時間を作ったら、いろいろ言ってくれるようになるんじゃないかな。
小俣研究部門だけじゃなくて事務部門も併せて研究所ですからね。
福山がっちりタッグを組んでやっていきたいです。本部とのビューロー同士のネットワークも非常に有用だと思っています。それがないと、我々からいきなり本部に物申せない感じがしますよね。そういう意味でも、たいへん重要で貴重な存在ですし、心強いパートナーだと思っています。

 ■ 国際卓越研究大学認定への期待と不安は?

小俣寺内先生から見て、国際卓越に認定されたときに、どんなことが多元研の課題になると考えられますか?
寺内あれを本当にやるの?っていうめちゃくちゃハードルの高いKPI(目標値)ですよね。教員の研究時間も人数も少ないし、それをサポートする人も減らされているなかで、どうやってこれを実現していくのかな?って。予算と論文の質や数は直結しない部分もあるからね。論文の統計数値を手っ取り早く上げるには、流行りの研究をやればいいのかもしれないけど、教員は皆やりたいことを持っていて、予算のために流行りの研究にシフトしたい人は、あまりいないんじゃないかな。

多元研として重要なのは、プロセス系の研究をどう遺していくかということ。世の中を支えるモノづくりにおいて、プロセス系は重要な研究分野なのに、あまり目立たない。多元研の研究者がちゃんと評価されるようにすることが、ひとつのテーマだと思っています。
小俣寺内先生の研究分野から考えると、プロセスの研究が大事だよねっていう考えに至られたというのは興味深いですね。
寺内僕自身はプロセス系じゃないんですが、自分が作っていた装置の商品化プロジェクトに参加した経験からそう思うようになったんです。

大学の研究者は、性能の向上を中心に考えるんですが、商品化のための評価軸は全然違うんですよね。どうやったら世の中に広く使ってもらえるかが重要なので、人に使ってもらうための性能をどうするか、コンスタントに作るために品質管理をどうするかというところに時間を掛けるんです。よく「死の谷」って言いますが、あれは、どうやって世の中の役に立てようかというプロセスを、研究者が知らないからなんだろうな、と思っています。
小俣以前に、寺内先生は商品化を経験されているので、エンジニアみたいな感覚も持っていますよね、だから所長が出来るんですよね、と話したことがあると思うんですけど。
寺内言われたことあります。
小俣それは当たらずとも遠からずという感じなんでしょうか?
寺内企業と一緒にモノづくりをやったのはいい経験でした。全然知らない世界を見たと思いました。最初は、企業の人は一体何を言ってるんだろうって、つまんないことばっかり言ってるなって思っていたんだけど、終わってみると大事な事だったんだって分かりました。
小俣ちょっと目線を上げて見るということに繋がるんですね。
福山先生からも、国際卓越への期待と不安をお聞かせください。
福山人件費の減少に歯止めがかかるという予算面での期待があります。毎年かかってくる削減率には、多元研だけでなく学内の附置研究所すべてが苦しんでいます。研究室が1つずつ消えてゆく状況、それが緩和されるだけでも世界が変わって、我々の多様性を維持できるという期待があります。

不安はKPI。KPIの達成は目標としては掲げますが、インセンティブの付け方には工夫をしたいですね。みなさん「研究したい」ということを駆動力にして日々暮らしていると思うので、そこを伸ばしていければいいなと思います。

助教も含めて全員をPIにするという話もありましたよね。分野によっては、寺内先生のように1人でやってるところもあるので、研究者が独立して研究出来る体制を増やしていく。准教授のテニュアトラックもそうですが、その方向に舵を切る流れになるんだと思います。
寺内多元研にいる教員のパフォーマンス、アウトプットをいかに最大化するか、それが最終目標であることは間違いないと思います。いろんな課題があるけど、多元研にとってプラスになる事をやればいい。目標はひとつですから、それに対して役に立つと思えばやって、だめならやらなければいいんです。
福山論文の質と量を向上させるための方法として、ご自身の書いた論文をどうされてますか?プレスリリースやSNSを通して多くの人に知ってもらうのも大事ですが、自分の研究により近いコミュニティの人たちに、今回こんな論文書いたよとアピールしていますか?いい論文は自ずと誰でも見てくれると考える人もいるかもしれませんが(笑)、新しい論文が出たことを知ってもらうために、一歩の努力をしたら違うのかもしれないと考えています。
小俣例えば、研究者のためのSNS「ResearchGate」とかがありますよね。自動的に、あなたの論文が出ましたねとか、誰かが読みましたよと通知がきたり、他の誰かが拡散したりしてくれる。そういったツールをうまく使えるとよさそうですね。
福山論文のオープンアクセス化については、大学が支援していますよね。出版社によっては、Article Processing Charge(論文掲載料)の割引や全額免除もあります。慣れてない人も多いかもしれませんが、そういう制度を利用して、労を少なく自分の研究をアピールするのがいいなと思っています。
小俣実際にオープンアクセスにするとサイテーションが上がるのか、そこまで提示してもらえるといいですよね。そういう意味では、URAの仕事はバラエティがありますね。
寺内所長に就任して最初に本部に行ったときに、多元研ってなんですか?って聞かれたんです。他の研究所は名前から分かるけど、多元研はよく分からないですねって言われる。それに対してクリアに説明するのが難しいんですよね。多元研は何を目指して何をやっているのかを、みんなで考えないといけないんじゃないかな。多元研を作った時に書いた、多元研はこういう活動をしますっていうのをうまくまとめて、その活動に対してこういう成果が出ています、という言い方をするとアピールしやすくなるかもしれません。