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プレスリリース
高分子を用いた神経模倣素子の応答速度制御に成功「神経のような動き」をする電子部品の実用化に向けて

発表のポイント

  • 神経の動作を模倣した電子素子(以下、「神経模倣素子」と呼ぶ)の応答速度を自在に制御する方法を見出した
  • 作製した神経模倣素子は従来と比較して約5倍の高速動作を実現した
  • この成果は脳型コンピュータへの応用などへの波及効果が期待される
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    概要

     脳の神経回路網に似た動作を示す神経模倣素子の研究は盛んに行われています。東北大学の山本俊介助教(研究当時:多元物質科学研究所、現所属:工学研究科バイオ工学専攻)と英国ケンブリッジ大学のGeorge G. Malliaras教授は、導電性高分子を用いた神経模倣素子の高性能化と動作原理解明を目指して研究を行いました。その結果、導電性高分子にイオン伝導性高分子を混合した活性層を用いることで神経模倣素子の応答速度を自在に制御できることが分かりました。これは神経模倣素子の設計方針の構築に寄与するだけでなく、今なお不明な点が多い動作原理の解明にも役立つ成果です。本研究の成果は、脳の動作を模倣した新型コンピュータの応用研究につながることが期待されます。
     本研究は本学が推進する「若手リーダー研究者海外派遣プログラム」を活用した在外研究(2018~2019年度)による成果です。
     本成果は2020年6月15日(米国時間)に米国化学会発行の科学誌「ACS Applied Electronic Materials」でオンライン公開されました。
    プレスリリース本文(PDF)
     
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    電気化学トランジスタ(左上)と今回用いた入力信号(左下)の模式図、およびこの入力を用いて保持時間を測定した際のデータ(右)。この実験では2本の電圧パルス(入力1と入力2)を様々な時間間隔で素子のゲート電極に入力しながらドレイン電極からの出力信号を観測しました。その結果、入力間隔が短い場合には入力2が到達した時点まで入力1の情報が「記憶」されていましたが、入力間隔が長くなると徐々に入力1のイベントが「忘れられて」行く様子が分かります。この、忘れられるまでの時間(=情報保持時間)はイオン伝導性高分子の添加に伴って短くなることが明らかになりました。
     
     

    論文情報:
    “Controlling Neuromorphic Behavior of Organic Electrochemical Transistors by Blending Mixed and Ion Conductors”
    Shunsuke Yamamoto, George G. Malliaras
    ACS Applied Electronic Materials
    DOI:10.1021/acsaelm.0c00203
     
    関連リンク:
    東北大学
    東北大学工学研究科・工学部
    Information in English

    問い合わせ先

    (研究に関すること)
    東北大学大学院工学研究科
    バイオ工学専攻 機能高分子化学分野
    助教 山本 俊介(やまもと しゅんすけ) 
    電話:022-795-7229
    E-mail:syama*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)