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研究内容

研究内容

放射光で未踏の時空間を可視化し、材料科学を革新

実用材料やデバイスの多くは、原子スケール(ミクロ)からミリメートルスケール(マクロ)に至るまで、 階層的かつ不均一な構造を有しており、その性質や機能は空間・時間にまたがる多様な現象によって決定されます。 これらを理解・設計するためには、ミクロからマクロ、静的から動的に至る構造と特性の関係を、 包括的かつ定量的に捉えることが不可欠です。

本研究室では、放射光を用いた最先端のイメージング・分光技術の開発とデータ解析手法の高度化を通じて、 ナノからマイクロ、さらに時間軸へと拡張した未踏の時空間スケールでの観察・解析に取り組んでいます。 特に、コヒーレントX線計測とデータ駆動型アプローチを融合した 超タイコグラフィ を中核として、従来手法では捉えられなかった動的現象の可視化を実現しています。

これにより、電池・触媒材料における反応機構や劣化過程、 次世代半導体デバイスの構造と性能・信頼性の関係、 金属材料の核形成・成長や変形・破壊ダイナミクスの理解を深化させます。

現在進めている主な研究課題

高空間分解テンダー・硬X線タイコグラフィ計測システムの開発

NanoTerasu BL10Uにおいて、テンダーX線から硬X線までの広いエネルギー領域をカバーする高空間分解タイコグラフィ計測システムを開発しています。 高性能X線集光光学系と高速二次元検出器CITIUSを組み合わせ、幅広い材料をナノスケールで観察することを目指しています。 これまでに、広帯域での高分解能タイコグラフィ計測を実現するとともに、CITIUSを用いた高感度計測や、 テンダーX線領域における10 nmを下回る空間分解能の実現に向けた研究を進めています。

NanoTerasuのタイコグラフィ計測システム
(a) タイコグラフィ装置全体、 (b) Advanced Kirkpatrick–Baezミラー、 (c) CITIUS検出器
Related Publications / 関連論文
2024
N. Ishiguro et al., “Towards Sub-10 nm Spatial Resolution by Tender X-ray Ptychographic Coherent Diffraction Imaging,” Applied Physics Express 17, 052006 (2024). Spotlight 第47回応用物理学会優秀論文賞
2011
Y. Takahashi et al., “Towards High-Resolution Ptychographic X-ray Diffraction Microscopy,” Physical Review B 83, 214109 (2011).
Press Releases / プレスリリース
X線顕微分光イメージングによる電池・触媒材料の化学状態イメージング

X線吸収端近傍で入射X線エネルギーを変化させながら顕微イメージングを行い、材料内部の元素分布だけでなく、化学状態をナノ・マイクロスケールで可視化する手法を開発しています。 タイコグラフィ-XAFSや全視野型X線顕微鏡-XAFSを活用し、電池材料や触媒、酸素吸蔵材料などの機能性材料における化学状態の不均一性や、反応・劣化に伴う変化を明らかにすることを目指しています。 これまでに、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、全固体電池、酸素吸蔵材料などを対象として、二次元・三次元・オペランド化学状態イメージングを実現しています。

リチウム硫黄電池材料:S–C結合の空間分布
リチウム硫黄電池材料:S–S結合の空間分布
セリア・ジルコニア固溶体触媒のCe価数分布
Related Publications / 関連論文
Press Releases / プレスリリース
三角形開口を用いた動的コヒーレントX線回折イメージング法の開発と金属材料の組織観察への応用

三角形開口を用いたコヒーレントX線回折イメージングにより、走査を必要とせず、単一の回折パターンから試料像を再構成する動的イメージング法を開発しています。 これまでに、拡張物体のシングルフレームイメージングを実証するとともに、X線光子相関分光法(XPCS)と組み合わせることで、ナノメートルからマイクロメートルスケールにわたる粒子運動解析を実現しました。 金属材料の核形成・成長、変形・破壊などの動的過程への応用を進めています。

金コロイド粒子のブラウン運動の動的イメージング
LPSO型Mg合金の加熱に伴う組織形成過程の動的イメージング
Related Publications / 関連論文
Press Releases / プレスリリース
X線タイコグラフィ・CT計測法の高度化と半導体材料・デバイス解析への応用

厚い試料を高い空間分解能で観察するため、X線の試料内部での伝搬を考慮したマルチスライスX線タイコグラフィの開発に取り組んできました。 これまでに、厚い試料を複数のスライスに分割して再構成するマルチスライス法や、試料を傾斜させながら計測するプリセッションX線タイコグラフィ、 さらにマルチスライス法を用いた三次元再構成法を開発してきました。 近年は、NanoTerasuのテンダーX線と高精度回転機構を組み合わせたタイコグラフィCT計測システムを開発し、 軽元素に対する高い感度と適度な透過力を活かして、CMOSイメージセンサー内部のSiとSiO2の三次元識別や、 3D NANDフラッシュメモリ用高アスペクト比エッチングホールの非破壊三次元観察など、 半導体材料・デバイス解析への応用を進めています。 現在は、タイコグラフィCTにマルチスライス法を導入することで、 厚い試料におけるX線伝搬や多重散乱の影響を考慮した、より高精度・高分解能な三次元イメージング法の開発を進めています。

CMOSイメージセンサー内部構造の三次元再構成像
3D NANDフラッシュメモリ用高アスペクト比エッチングホールの三次元再構成像
Related Publications / 関連論文
Press Releases / プレスリリース
データ駆動型X線イメージング・リアルタイム解析法の開発

コヒーレントX線イメージングで得られる大規模な回折データから、高精度な画像を高速に再構成・解析するためのデータ駆動型手法を開発しています。画像フィルタリングを利用したシングルフレーム回折データからの振幅像再構成や、仮想シングルピクセルイメージングに基づくタイコグラフィ・蛍光X線像の高精度化を実現してきました。また、構造化照明と強度相関を利用したX線ゴーストイメージングなど、新しいイメージング手法の開発も進めています。さらに、物理法則や計測原理を組み込んだ深層学習により、動的コヒーレントX線回折イメージングの高速・高精度な画像再構成を実現しています。現在は、放射光実験中に機械学習を用いて画像をリアルタイムに再構成・解析するシステムの開発を進めています。

Related Publications / 関連論文
Press Releases / プレスリリース
X線顕微分光・高速XAFS計測およびデータ解析手法の開発

X線吸収微細構造(XAFS)を利用して、材料内部の局所構造や化学状態を高空間分解能かつ高効率に解析する計測・データ解析手法を開発しています。 スペクトロタイコグラフィとEXAFSを組み合わせたナノスケール原子間距離解析、 Kramers–Kronig関係を利用した位相回復、疎な分光データからのXAFS復元に加え、 放射光ビームラインにおける高速XAFS計測システムの開発にも取り組んでいます。

Related Publications / 関連論文
マルチビームX線タイコグラフィ計測システムの開発

放射光の利用効率を高め、広視野・高分解能イメージングを実現するため、 複数のコヒーレントX線ビームを試料に同時照射するマルチビームX線タイコグラフィを開発しています。 これまでに、SPring-8において3本のX線ビームを用いたマルチビームタイコグラフィを世界で初めて実証し、 従来のシングルビーム法と比較して、同じ測定時間でより広い視野を観察できることを示しました。 さらに、各ビームに異なる位相変調を与えることで位相回復計算の安定性を向上させ、 より多くのビームを用いた高効率・高速タイコグラフィ計測システムの開発を進めています。

Related Publications / 関連論文
2020
M. Hirose et al., “Multibeam ptychography with synchrotron hard X-rays,” Optics Express 28, 1216–1224 (2020).
Press Releases / プレスリリース
Bragg X線タイコグラフィ計測法の開発と結晶ひずみ・欠陥イメージングへの応用

結晶材料内部のひずみや欠陥構造を高い空間分解能で可視化するため、 Bragg回折とタイコグラフィを組み合わせたBragg X線タイコグラフィ計測法を開発しています。 これまでに、シリコン単結晶中の転位ひずみ場をナノメートルスケールで可視化し、 位相特異点を利用したX線渦ビーム形成の可能性を示しました。 さらに現在は、入射X線エネルギーを変化させながらBragg回折条件を走査する エネルギー分散型Braggタイコグラフィへと発展させ、 結晶性薄膜や半導体デバイス内部の三次元ひずみ・結晶構造分布の高精度イメージングを目指しています。

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Press Releases / プレスリリース
デュアルビームX線タイコグラフィによる低線量イメージング法の開発

放射線損傷を受けやすい材料を高分解能で観察するため、 二つのコヒーレントX線ビームを利用するデュアルビームタイコグラフィを開発しています。 参照となる強いビームと試料を透過した弱いビームを干渉させることで、 低光子数条件における位相情報の検出感度を高め、 従来法より少ない照射線量での像再構成を目指しています。 現在、必要線量を大幅に低減するための計測・再構成法の高度化を進めています。

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