研究目的

遺伝子発現を化学的に制御する方法論の開発
~有機化学による生命現象の制御・解明  In Cell Chemistryを目指した有機化学~

 私たちの研究室では化学の力で生命科学を解き明かしていく(ケミカルバイオロジー)ことを目的に、細胞内の遺伝子発現を制御する化学的ツールの開発を目指し研究を行っています。ヒトゲノム解析の終了が宣言されてから15年あまりが経過しましたが、この間の遺伝子発現機構に関する研究は凄まじい勢いで進展しています。特に遺伝情報の単なる仲介役と考えられていたRNAが実に多彩な機能を持つことが明らかになってきており、複雑な高次生命現象の制御に重要な役割をもつことが指摘されています。ヒトゲノムの98%以上が蛋白質をコードしない非翻訳領域であること、さらにこれらの非翻訳領域を含むほぼゲノム全体がRNAへと転写されていることが明らかにされ、生命科学は新たな時代を迎えています。このようなドラスティックな変化を背景に、細胞内における遺伝子機能の解明はますます重要視されてきています。

 私たちは細胞内の遺伝子機能解明を行う化学的な手法の開発を目指し、遺伝子発現をコントロールできる機能性分子を独自に設計・合成し、さらに細胞内での機能及びその分子の動態を調べ、既存の分子ではできなかった新たな機能を持つ人工分子を開発することを目標に研究を行っています。特に新しい機能を持つ分子を設計・合成する際に、常に細胞内での機能を意識しながら研究を進めることから、「In Cell Chemistry」という新しい分野への展開を考えています。この分野は化学と生物化学の融合が必要とされる分野であり、この中から従来にはなかった新しい科学が生まれてくる可能性があると期待しています。

研究概要

 遺伝子発現機構の破たんは癌をはじめとする様々な病気の原因となることがわかっています。異常となった遺伝子発現機構のみを認識し、選択的にその機構を制御する方法論は病気の原因となる標的に対して論理的なアプローチが可能であると考えられ、新しい治療法さらには創薬の方法論として展開できると期待されています。私たちは、遺伝子発現を化学的に制御する方法論の開発を目指して、主に下記の4つのテーマで研究を進めています。
(新学術領域 計画班(永次): 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製
(新学術領域 公募班(鬼塚): 化学コミュニケーションのフロンティア


(1) 次世代核酸医薬を目指した架橋反応性核酸の開発研究内容
(2) 核酸の高次構造を選択的に化学修飾する機能性分子の開発研究内容)(プレスリリース
(3) 核酸を標的にした擬ロタキサン形成法の開発とその応用研究研究内容
(4) 標的核酸塩基のフリップアウトを誘起する人工核酸の開発と特異な化学反応の探索(研究内容)

研究設備

基本的な有機合成を行うための環境が整っています。
また、生化学・細胞系の実験も行えます。
より詳しい研究設備に関してはこちらから。