2. 次世代燃料電池材料の開発
2. 次世代燃料電池材料の開発
燃料電池は大規模発電用から家庭用,移動体用まで,様々な分野での実用化が期待されている発電装置で、既に市販もされています。その一つはポリマーを電解質とした100℃以下の低温で作動する固体高分子型燃料電池で、作動温度が低いため反応を促進する貴金属触媒を必要とします。もう一つはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を電解質とする固体酸化物型燃料電池で、酸化物であるYSZ中を酸化物イオン(O2-)が自由に動けるようになるには高温が必要であるため、通常800~1000℃で運転されます。そのため燃料電池システム全体を構成するには耐熱性の高い材料が必要となります。従って、これらいずれの燃料電池も価格が高くなり、各家庭に1台を実現するには価格の低減が必要となっています。
中温作動型燃料電池は250~500℃で作動する燃料電池で、貴金属触媒が不要で廉価な材料でシステムを構成できるため、低コストを実現できる次世代型の燃料電池として期待されています。現在でもこの温度域で作動する燃料電池がないのは、この温度域でプロトン(水素イオン;H+)あるいは酸化物イオンが自在に動き、電解質として使用可能なイオン伝導体がないためです。
私たちの研究室では、中温作動型燃料電池の電解質に適用可能なプロトン伝導性の固体電解質を開発しています。これまでに電荷担体であるプロトンをガラス中に10~20mol・L-1という高い濃度で注入する方法を開発し、この方法を用いて300℃前後の温度域では世界最高クラスのプロトン伝導性のガラス電解質をつくり出しています。現在は、ガラス電解質の更なる高性能化と、ガラス電解質に適した電極材料の開発を行い、中温作動型燃料電池システムの実現を目指して研究を進めています。
J. Electrochem. Soc. 160, E143-E147 (2013). (doi: 10.1149/2.093311jes)
J. Mater. Chem. A 2, 3940-3947(2014). (doi: 10.1039/C3TA14561A)
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