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PCFC電解質における酸素ポテンシャル勾配の評価


  プロトン伝導型燃料電池(Proton-conducting Ceramic-electrolyte Fuel Cell; PCFC)は、電解質にプロトン伝導性セラミックスを用いた燃料電池です。プロトン伝導性セラミックスは、従来の固体酸化物形燃料電池に用いられる酸化物イオン伝導性のセラミックスに比べて、より低い温度で良好なイオン伝導性を示します。したがって、この材料を電解質に用いることで、より低い温度で作動する燃料電池を構築することができる期待されています。また、プロトン伝導型燃料電池では、従来の固体酸化物形燃料電池とは逆に、プロトンが燃料極側から空気極側に移動し、空気極側で水を生成します。したがって、生成した水によって燃料が薄められることがないので、燃料利用率を高めることができる、といった利点もあります。
 プロトン伝導型燃料電池の電解質材料の候補として注目される材料に、Y添加BaZrO3(BZY)があります。BZYは、酸素分圧が高い条件では、プロトン以外にホール(電子正孔)も伝導することが知られています。このBZYのホール伝導性は、電解質内部にリーク電流を生じさせ、燃料電池のエネルギー効率や出力などを低下させる原因となるため、プロトン伝導型燃料電池の電解質材料への応用を考えた際に不利な点となります。では、リーク電流による電池特性の低下を最小限に抑えるためには、どのように電解質を設計すればよいのか?それに答えるためには、BZYを電解質として用いた際、PCFC環境下において、電解質内部にどのような酸素の化学ポテンシャル勾配が生じているのかを明らかにしなければなりません。そこで雨澤研究室では、イオン‐電子混合伝導性と局所平衡を考慮することで、電解質内部の酸素の化学ポテンシャル勾配を計算し、それを基に、電解質の設計指針を与えることを行っています。