メカノイオニクス(応力場における固体イオニクス)
近年では、リチウムイオン電池のさらなる高エネルギー密度化を目指し、全固体型リチウムイオン電池の開発が進められています。全固体型リチウムイオン電池のように、構成材料が全て固体で構成されるようになると、デバイス内に機械的に拘束された箇所が存在することになります。そのため、構成材料間の格子ミスマッチや、充放電中の構成材料の体積変化に伴い、デバイス内に応力が導入される可能性があります。固体イオニクス材料の物性は、温度や雰囲気だけでなく、この応力によっても変化をすることが次第に明らかにされつつあります。もし、応力によって材料物性が変化するのであれば、材料に応力を意図的に導入することにより、その物性を制御する、あるいは発現させる、という新しい材料機能設計が行える可能性があります。しかしながら、応力が材料物性・特性に及ぼす影響については、まだまだ理解が進んでいません。これは、応力が作製上の成り行きでデバイスに導入されるため、応力の分布が均質とは見做せず、定量的な評価が困難であったことに起因しています。そこで雨澤研究室では、薄膜型全固体型リチウムイオン電池の正極/電解質を模擬したセルに対して4点曲げにより荷重を負荷することで、材料を比較的単純な応力状態に置き、さらにそれにより発生する起電力を測定することで、応力負荷による電極材料のLi化学ポテンシャルの変調を評価しています。また、応力とLi化学ポテンシャルの関係に対して理論的な説明を与えるため、熱力学理論に基づく解析を行っています。