固体酸化物形燃料電池の電極反応のメカニズム解明と高性能電極創製
固体酸化物形燃料電池の作動時、空気極では空気中の酸素が電子を受け取って酸化物イオンになる酸素還元反応が、燃料極では水素に代表される燃料が酸化物イオンと反応して電子を放出する燃料酸化反応がおこります。しかしこれらの電極反応は、電極全体で均等に起こるわけではありません。実際の固体酸化物形燃料電池では、電極の一部でしか反応が生じていないことがほとんどです。この“実際に電極反応が進行する領域”である電極反応場が、どの程度の広がりを持っているのか、どのような因子により広さが決まるのかを把握することは、燃料電池の電極材料・構造、作動条件の最適化を行う上でとても重要です。しかしながら、実際の固体酸化物形燃料電池の電極は、多孔体が使用されており、微視的な視点で見ると材料の粒同士が三次元的につながりあった非常に複雑な構造をしています。それゆえ、電極反応場もそのような複雑な構造に起因する様々な因子の影響を受け、その広さを定量的に議論するのはとても難しい課題でした。そこで雨澤研究室では、フォトリソグラフィなどの微細加工技術をもちいて、電極の構造をより単純化したモデル電極を開発し、電極反応場の評価を行っています。
このモデル電極を用いることで、電極の多孔度や屈曲度といった電極の構造に由来する因子の影響を排除して、電極反応場の広がりを定量的に評価することが初めて可能になりました。