Introduction

「蛋白質の折り畳み」をキーワードにした生命科学研究

 

「生命」と「蛋白質の折り畳み」

 蛋白質は生命活動を担う万能の機能性分子です。
 蛋白質は、筋肉収縮や酵素反応などの生命特有の現象を生みだす鍵となる働きを持ちます。
 蛋白質が機能を発揮するためには、特定の構造に折り畳むことが必要です。
 従って、蛋白質がある形に折り畳むという現象は、生命を支える重要性を持つと言えます。

 

「蛋白質の折り畳み問題」

 蛋白質は20種類のアミノ酸が数珠状に並んだ高分子です。
 自然界に存在する蛋白質は、進化の過程で選ばれたアミノ酸配列を持っています。
 この配列には、特定の構造に"ほぼ間違いなく"、"短時間内 に"折り畳むという能力が備わっています。
 蛋白質がなぜこれらの特性を持つのかを問うのが「蛋白 質の折り畳み問題」です。
 この問題は大変難解であることで有名です。しかし、この問題をもし解くことができれば、
 人工蛋白質(アミノ酸配列)をデザインする、あるいは、アミノ酸配列から蛋白質構造を予測する、
 などの応用が広がると予想されます。

 

「私達の研究」

 私達は、実験家の立場から「蛋白質の折り畳み問題」に挑戦しています。
 特に自然の蛋白質の折り畳み運動をできるだけ詳しく捉え、運動の特徴を理解することを
 目指しています。そのために、私達はさまざまな実験装置の開発を行っています。
 例えば、蛋白質の運動を一分子レベルで検出する新しい装置を開発し、
 蛋白質の折り畳み運動の観察に応用しています。
 また、時分割X線小角散乱法の開発にも寄与してきました。
 このように、オリジナルな実験手法で蛋白質の知られざる特性を解明することで、
 生命現象のさまざまな側面を明らかにすることが私達の目標です。