Research

 なぜ一分子観測?

「蛋白質が折り畳む様子を観察するにはどうすればいいでしょうか?」一般的には、分光学的な手法(円2色性や蛍光)で蛋白質の構造変化を検出することです。溶液中の蛋白質からの平均強度の変化を観測します。この手法は、蛋白質の折り畳みの平均的な描像を捉えるには非常に強力な手法です。 しかし、私達が本当に観測したいことは、蛋白質一分子の紐(主鎖)が構造形成する様子です。そのために、従来のアンサンブル手法に加えて、一分子レベルで蛋白質の折り畳みを観測することが必要になります。

 

 蛋白質を基板から解き放て!

従来の一分子観測法では、まず、良く輝く蛍光色素を蛋白質の末端に付加します。次に、蛍光顕微鏡で長時間観測するためには、基盤に蛋白質を固定する必要があります。ところが、蛋白質を固定することにより、蛋白質が基板と相互作用してしまい、蛋白質自身の運動が基板との相互作用により隠されてしまいます。このように、蛋白質を基板に固定せずに、一分子観測ができる新しい方法が必要になります。

  

 一分子観測装置

これが、私達の開発した一分子観測装置です。
  一分子観測装置

希薄の蛋白質を細いキャピラリーに流し、蛋白質一分子から出る蛍光を検出しています。低倍率で中程度の集光率の光学系を用いるのがみそです。蛋白質の末端に付加した蛍光色素からでる蛍光強度は、蛋白質の構造に対応して変化するために、蛍光強度の変化が蛋白質の構造変化に対応しています。

  

 仙台で最初の一分子データ!


 データ1 データ2 データ3 データ4 データ5

大阪から仙台に移り、長時間観測用の「鎌形2号機」を組み立てました。
記念すべき、仙台で最初の一分子データです。(図は蛍光色素一分子の輝点です。時間とともに、上から下へ流れています。)高時間分解能を持つ「小井川1号機」も立ち上がりました。

  

 一分子レベルで見た蛋白質の折り畳み  

現在までに、変性したシトクロムcのミリ秒の遅い構造探索運動が存在することを明らかにしました。
現在、一分子長時間観測法を開発し、シトクロムcの変性状態と中間体との間の構造転移が観測できるようになりました。また、高時間分解能の一分子観測法を開発し、サブミリ秒の構造探索運動を追跡できるよう
になってきました。 装置開発と同様に、種の違うシトクロムcやモネリンなどを用いて、一分子レベルの折り畳み運動の違いを調べています。           
                           (鎌形作成 更新日時:2009年4月24日)

 学会発表・講演などは   こちら