11-2 高分子学会講演会
生物に学ぶ物作り —ネオ・バイオミメティックス—
<趣旨> 生物の多様性は、生物を模倣し着想を得て新たに設計される材料の多様性に反映されます。今世紀に入って欧州を中心に、蓮の葉の超撥水性を真似たセルフクリーニング・コーティング用塗料、蛾の眼を模倣した無反射フィルム、ヤモリの指のように繰り返し利用が可能で粘着剤フリーの吸着テープなど、昆虫や植物の表面が持つ特異なナノ・マイクロ構造とそれらが有する様々な機能を模倣した「次世代バイオミメティック材料」とも呼ばれる新しい材料が注目を集めています。欧米における「次世代バイオミメティック材料」研究の潮流は、ナノテクノロジーの展開と相まって、生物学・博物学と材料科学の緊密な学際融合に基づく新しい学問体系を生み出すとともに、材料設計や生産技術の新規開発とそれに基づく省エネルギー・省資源型モノつくりへの技術革新をもたらすものとして産業界からも注目されています。
「工学と生物学の連携」や「バイオミメティクスの産業展開」などを図るために我が国が早急に取り組むべき課題について、大学、博物館、研究機関、企業、科学技術政策など様々な立場からの問題提起と意見交換を行う機会となれば・・・と思います。
また、本講演会は、高分子学会会誌「高分子」とコラボレーションした初めての企画です。
本講演会の内容は、「高分子」昨年5月号の「特集 次世代バイオミメティック材料」の内容とコラボレーションしています。「高分子」誌面ではお伝えきれなかったバイオミメティックス研究の魅力、最新の研究動向などを、特集号の展望をご執筆頂いた東北大・下村政嗣先生、物材研・細田奈麻絵様、テイジン・広瀬治子様、トッピックスをご執筆頂いた富士フイルム・浅見正弘様などご寄稿頂いた4名の方をはじめ、産学官の世界フロントランナー研究者合計9名の方々からご講演頂きます。
「高分子」で興味をもって頂いた特集記事の内容を、高分子講演会で最新のプレゼン資料と共に講師の先生方から直接お話しをお伺いする・・・新しい企画を存分にお楽しみ下さい!
主 催: 高分子学会 行事委員会
協賛・協賛:バイオミメティックス研究会、(社)日本能率協会、ネイチャーテック研究会、エアロ・アクアバイオメカニズム学会、バイオテンプレート研究会(予定)
会 期:2012年2月10日(金)10:20~17:10
会 場:東工大蔵前会館 ロイヤルブルーホール(東京都目黒区大岡山2−12−1) 交 通:東急目黒線・東急大井町線 大岡山下車徒歩1分
プログラム
<10:20~11:10>
1.自然に学ぶ粋な暮らしとテクノロジー (東北大学)石田秀輝
2011.3.11に起こった東日本大震災は、進歩を信じていた文明や文化のもろさをまざまざと見せつけ、地球環境を基盤とした、あたらしい暮らし方やものつくりのかたちを我々に問うたのである。それは、脱近代化すなわち知の再編による文明創出への新しい一歩を問うたとも言えるのではなかろうか。
<11:10~12:00>
2.生物多様性に学ぶパラダイムシフトとイノベーション (東北大学)下村政嗣
生物の多様性は、それを規範として設計・製造する材料システムの多様性を意味する。生物のモノ作りの原理、作動の機構は、人間の技術体系とは違う規範(パラダイム)に基づいており、イノベーションをもたらす可能性がある。
<13:00~13:40>
3. 昆虫から学ぶ科学:エントモミメティクス (京都大学)藤崎 憲治
昆虫は4億年の進化的歴史を持ち、生物の中でもっとも種多様性が高く、かつ生活様式も驚くほど多様な節足動物の仲間である。彼らがいかにバイオミメティクスのモデルとして有用であるのかを紹介する。
<13:40~14:20>
4. 材料系バイオミメティクス研究の動向 (物質材料研究機構) 細田 奈麻絵
新素材開発の手本としての生物が持つ魅力は、独特な微細構造により元の素材の何千倍もの特性を引き出すデザインや低環境負荷技術開発のヒントとなりうるものづくりの知恵などが挙げられる。本講演ではその研究動向について紹介する。
<14:20~14:50>
5. ヤモリに学ぶ全く新しい接着(ゲッコテープ) (日東電工(株))前野洋平
ヤモリテープとは、ヤモリ足裏繊維が生み出す接着機能を模倣した粘着テープのことであり、次世代の粘着接着として期待されている。本講演では、ヤモリが持つ優れた機能を、最適な層数分布のカーボンナノチューブを用いることで代替した、人工ヤモリテープ各種の開発状況について紹介する。
<14:50~15:20>
6. モルフォ蝶の翅を模倣した光学干渉繊維と超多層フィルムの開発 (帝人(株))広瀬治子
モルフォ蝶の翅を模倣して作製した構造発色繊維の‘モルフォテックスR’および構造発色フィルムの‘超多層フィルム’について紹介する。構造色のメカニズム、繊維とフィルムの構造、自然界でみられる多層構造、工業的に作製した多層構造について紹介する。
<15:40~16:10>
7. バイオミメティクス − 生物からの発想による機能性材料の設計と開発 − (富士フィルム(株))浅見正弘
機能性材料開発は、「新たな化合物による機能発現」から、「サブミクロン構造による機能発現」にパラダイム転換している。これにはバイオミメティクスの考え方が重要な役割を果たしてきた。ハニカムフィルムを例にこれらの材料を工業レベルで実現するうえでの諸課題を紹介する。
<16:10~16:40>
8. 海藻やフジツボ類などの付着物も嫌がるマグロ肌模倣船底塗料 (日本ペイントマン(株))山盛 直樹
海洋生物は進化の過程でエネルギーを少なくして泳ぐ省エネの知恵を身につけている。この知恵をヒントに摩擦抵抗を低減させた低燃費型船底塗料を開発した。ここでは、その技術と実用試験の結果について紹介する。
<16:40~17:10>
9. 蛾の目を模した反射防止フィルムの開発 −自己組織化によるバイオミメティック機能材料構築 − (首都大学東京)柳下 崇
蛾の複眼の表面には約100nmの周期的に配列した凸凹構造(モスアイ構造)によって無反射性を実現している。近年、規則的にかつ自己組織化的に形成されるナノスケールの細孔を活用や、精度よく単層に配列したナノドットアレイ技術を活用したモスアイ構造を有するフィルム構築が開発されている。本講演では、これら自己組織化技術を活用した反射防止フィルム開発研究を紹介する。
定員 100 名
参加費 ㈰企業10,500 円 ㈪大学・官公庁5,250 円 ㈫学生1,050 円
㈬名誉・終身・フェロー・ゴールド会員・シルバー会員2,100 円
申込先:高分子学会
http://www.spsj.or.jp/entry/annaidetail.asp?kaisaino=717