研究内容
研究内容詳細
本研究分野は、国内産業の持続的発展に必要不可欠である非鉄製錬業の活発な状態での持続と金属資源の効率的な循環に向けた研究活動を行っている。具体的には、非鉄金属製錬業を基盤とする金属資源リサイクル、二次原料の前処理技術、廃棄物の無害化処理技術、不純物対応技術、製錬過程における副産物からの金属資源回収、環境負荷元素の安定固定化技術の開発等を行っている。主に化学熱力学を学問ベースとした研究開発を行っているが、その他にも新規的な物理選別技術など化学熱力学のみでは対応できない技術課題へも積極的に取り組んでいる。
高温プロセッシング
1.新鉱物資源の製錬プロセスの開発
海底鉱物は新鉱物資源として期待されているが、陸上鉱物資源とは物理的・化学的性質が異なることから改めて製錬技術の開発が必要である。そこで、非鉄金属資源を含有した海底鉱物資源を対象とした製錬プロセス開発に関する活動を行っている。
湿式プロセッシング
2.ショット状アノードを用いた新規銅電解精製法に関する研究
二次原料主体の銅製錬所で製造される粗銅は不純物や貴金属が高濃度に含有されているため、電解精製法ではアノードの不動態化により電気銅の製造が出来ない。そのため、一旦、硫酸中に高温高圧下で酸化浸出された後に電力使用原単位が大きい電解採取法で電気銅が製造されている。そこで、本研究では、小径ショット状アノードを用いることにより不動態化を問題としない銅電解精製技術の開発を行っている。
3.スコロダイト合成による砒素の安定固定化に関する研究
高濃度As(V)含有の硫酸第一鉄(FeSO4)溶液中にヘマタイト(Fe2O3)粉末を添加することでより効率的にファセット状の粗大スコロダイト粒子が合成されることを明らかとしている。現在は、スコロダイト生成機構の解明に向けて固体酸化鉄中の鉄の価数の影響ならびに溶液中のFe(II)イオンとの関係の調査を行っている。
4.量子化学計算支援による難処理鉱物用の新規浮選剤の開発
本研究では、第一原理計算に基づく熱力学分配平衡計算のための手法であるCOSMO-RS (COnductor-like Screening MOdel for Realistic treatment of Solvents)を利用し、銅鉱石あるいは銅ヒ素鉱石に高い選択性を有する新規浮選剤の分子構造の抽出を行うことを目的に検討を進めている。
5.塩基性廃棄物の炭酸塩鉱物化によるカーボンリサイクル技術の開発
地球温暖化対策のため二酸化炭素を有価物として再利用するCCU技術に注目が集まっている。これらの技術の中で、塩基性の廃棄物や鉱物を利用して二酸化炭素の鉱物化を行う技術は、カーボンフリーの水素を必要とせず、反応のGibbsエネルギー変化が負であり、また得られる炭酸塩、骨材、コンクリート製品等の市場規模が比較的大きい等の特徴を有する。本研究では、コンクリート等の塩基性廃棄物を主要な対象とし、複数の検討を進めている。
6.バイポーラ膜電気透析法を利用した水処理に関する研究
複合膜の一種であるバイポーラ膜を利用した電気透析法による水処理に関する研究を進めている。バイポーラ膜電気透析を用いることで、薬剤の添加を行わずに、処理水のpHを電気的に効率よく変化させながら排水中のイオンの分離が可能となる。また、電気透析槽に流通させる溶液に体積差を付けることで分離対象物質の高度濃縮が可能となると期待される。本研究では特に排水中に希薄に含有されるリンやヒ素の分離と高度濃縮を目的とし、電気透析実験を進めている。
7.非水系や擬水系の溶媒を用いる金属電析プロセスの開発
湿式製錬や電気めっきなどの金属電析プロセスの多くは電解質水溶液を反応場とするため、水の電気分解反応は主反応の効率低下を招く。また、液中pHの局所的な変化による不溶性固体の析出など、水の電気分解に由来するトラブルも多い。本研究ではそのような水の電気化学的不安定性に由来する課題の解決のため、水を含まない非水系や、水分量の少ない擬水系の反応場を用いる電析プロセスの開発に取り組む。水溶液系とは異なるこれらの系における金属の電析挙動を調査し、その反応機構についても溶液化学に基づく解析を行った。
物理選別プロセス
8.高電圧パルス破砕による高効率物理選別技術に関する研究
太陽光発電パネルは複合材料であり、多種の材料を高効率で分離しつつリサイクルに回せるような要素技術が求められている。本研究では、近年効率的な装置が開発され、複合材料の選択的破砕を可能とする要素技術である高電圧パルス破砕をシリコン系の太陽光発電パネルリサイクルに適用し、かつその他の物理選別技術と組み合わせることで、パネル中の多種材料を選択的に分離回収する手法を確立することを目的としている。