昨年の夏、バージニア大学の Lee 先生が客員教授として当研究室に滞在されました。Ph.Dコースの学生 Anjana を連れて、、、滞在中に始まった共同研究の一つにフラストレート磁性体の示すスピングラス挙動の研究があります。スピングラスとは低温で磁性体中のスピンがランダムに凍結する現象であり、通常は構造(やそれに起因する相互作用)の乱れにより起こるものと考えられています。一方で、相互作用がフラストレートした磁性体でもしばしばスピングラス的な凍結現象が見られます。このフラストレート磁性体中の凍結現象がランダム系のそれと同じか否か?という問題は長く議論されています。本研究では典型的なフラストレート磁性体である SrCr9pGa12-9pO16 (SCGO)と同型の BaCr9pGa12-9pO19 の合成と基礎物性を報告しました。この系もやはり低温でスピングラス的凍結現象を示します。もちろん、この系には化学的なランダムネスが存在しますのでそれがグラス挙動の原因かもしれません。でも、本質的に異なるスピン凍結状態なのかもしれません。もうすこし研究を進める必要が有りそうです。もう少し頑張ります!
Junjie Yang, Anjana M. Samarakoon, Kyun Woo Hong, John R. D. Copley, Qingzhen Huang, Alan Tennant, Taku J. Sato, Seung-Hun Lee
Glassy Behavior and Isolated Spin Dimers in a New Frustrated Magnet BaCr9pGa12−9pO19
J. Phys. Soc. Jpn. 85, 094712-1 -6 (2016)
DOI:10.7566/JPSJ.85.094712