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[論文]大きな負の量子再規格化現象を観測!

相互作用するスピン系(つまり、磁性体ですね)の基底状態(つまり磁気モーメントが静止した状態ですね)からの励起(つまり、磁気モーメントの運動ですね)はマグノン(もしくはスピン波)と呼ばれる「波」を形成します。しかし量子揺らぎが極めて強い1次元 s=1/2 反強磁性スピン鎖では、基底状態がスピンシングレット状態、磁気励起は分数化されたスピノン励起となることがよく知られています。このスピノン励起の低エネルギー境界は古典的なスピン波近似と同じ分散関係を持ちますが、そのエネルギーはπ/2だけ大きくなります。この現象はスピン励起の正の量子再規格化と呼ばれます。

さて、スピン波の量子再規格化は常に正(即ちエネルギーが上がる)でしょうか?直感的に考えると、量子揺らぎは古典近似基底状態のエネルギーを更に下げますので、励起状態のエネルギーは相対的に上がると予想されます。だから負の再規格化は起こらないんじゃないかな、と。しかし、我々は今回フラストレートしたs=1/2籠目格子反強磁性体中のスピン波励起に大きな負の量子再規格化現象を観測しました!このような現象がフラストレート系に普遍的な現象かどうかは大変興味深いですね。もしかすると、量子揺らぎの新しい役割を見いだしたのかもしれません。

T. Ono, K. Matan, Y. Nambu, T. J. Sato, K. Katayama, S. Hirata, and H. Tanaka, “Large negative quantum renormalization of excitation energies in the spin-1/2 kagome lattice antiferromagnet Cs2Cu3SnF12”, J. Phys. Soc. Jpn. 83 (2014) 043701.

この論文は JPSJ Editor’s choice に選ばれました!

この論文に対して、JAEA の加倉井和久先生がNews and Comments を書いてくださいました。

K. Kakurai, “Negative renormalization of spin excitation energies — A new paradigm for quantum frustration?”, J. Phys. Soc. Jpn. News and Comments 11 (2014) 07.

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