2.2.1. 初期推定値の決定で求めた初期値を用いて、交互最小自乗法による多変量スペクトル解析を行います。
解析を行う前に、化学種分布、モル吸光係数のプロファイルの特徴を考えてみましょう。
- 化学種分布の特徴
- 常に正(non-negativity)
- 極大値は一つのみ(unimodality)
- 成分の総和は一定(closure)
- モル吸光係数の特徴
- 常に正(non-negativity)
これらを制約として用いて、交互最小自乗法を行います。具体的な手順は次の通りです。
- 初期値C0により元の行列(Raw Data)を除し(ここでは、左側から除する)、モル吸光係数行列S1′を得る。
- モル吸光係数行列S1′に非負制約をかける(non-negativity)→ S1。
- S1で元の行列を除し(ここでは、右側から除する)、化学種分布C1′を得る。
- 化学種分布C1′に、非負、単一極大値(unimodality)、総和一定(closure)の制約をかける→ C1。
- 元の行列とC1×S1を比較する。R-factorによる評価。
- 1.から5.を繰り返す。
- R-factorが規定値以上に達すれば終了。その時のC、Sを最適解とする。
または、R-factorが一定回数改善されない時、繰り返し計算を終了し、それまでで最もR-factorが良いものを最適解とする。
この方法は、C、S交互に制約をかけて、R-factorによる元データとの比較、評価を行うので、交互最小自乗法と呼びます。
交互最小自乗法による多変量スペクトル解析により、元の行列 Raw Data を数学的に C と S に分解することができました。