乾式工程 —プラズマアーク熔融—

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プラズマアーク加熱を用いた熔融精製法で、湿式精製では除去仕切れない、Si、Alなど環境からの汚染不純物、O、Nなどのガス性不純物を除去します。加熱熔融する雰囲気を、酸化雰囲気、還元雰囲気に制御して不純物を除去します。

 

PlasmaFurnace図 プラズマアーク熔解炉概略図(装置外観はこちら

 

アークと異なるのは、プラズマ生成ガスを勢いよく導入することで、熱ピンチ効果によるアーク柱の高密度化をはかり、5,000〜10,000Kもの高温[1]と、被熔融試料中に強い攪拌力を実現します。

 

1. 酸化熔融精製[2]

OPAM プラズマアーク加熱酸化熔融法は、母金属よりもOとの親和力の強い不純物を除去します。例えばFeの場合、Feへの溶解度以上のOを導入してFeOx相を形成し、SiなどのFeよりもOとの親和力の強い不純物をFeOx相へ移動させ、除去をはかります。

Oは、母金属の酸化物の添加することで加えます。プラズマ生成ガスにOを添加する方法だと、タングステンカソードや水冷銅るつぼが酸化してしまい、汚染として母金属に溶けこんでしまいます。

 

2. H2プラズマアーク熔融精製[3]

H-PAM of Nickel 酸化熔融精製の次は、還元雰囲気での熔融です。酸化熔融精製では、過剰のOを導入するため、Feの場合溶解度である0.2mass%前後のOがFe中に残ります。

プラズマ生成ガス(Ar)にH2を加えます。上述のように、プラズマは5,000〜10,000Kもの高温になります。このくらい高温になると添加されたH2は単原子Hとなって、非常に活性化します。このHが照射されて被熔融試料中のOと反応し、H2Oとして除去されます。さらに、NはNHxとして、CもCHxとして除去されます。

左の写真は、Ar-H2プラズマアークです。原子状Hが赤く発光しています。

 

 

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参考文献

[1] Fudolig, A., Nogami, H., Yagi, J., Mimura, K., Isshiki, M. (1997). Prediction of Surface Temperature on Metal Beads Subjected to Argon-Hydrogen Transferred Arc Plasma Impingemen. ISIJ International, 37(6), pp. 623-629. DOI: 10.2355/isijinternational.37.623

[2] Uchikoshi, M., Imai, K., Mimura, K., Isshiki, M. (2008). Oxidation refining of iron using plasma-arc melting, Journal of Materials Science, 43(16), pp. 5430 – 5435. DOI: 10.1007/s10853-008-2845-1

[3] Mimura, K., Saito, K., Isshiki, M. (1999). Removal of Oxygen and Nitrogen from Iron and Cobalt by Hydrogen-Argon Plasma Arc Melting, Journal of the Japan Institute of Metals, 63(9), pp. 1181-1190. DOI: 10.2320/jinstmet1952.63.9_1181