銅(II)クロロ錯体の構造 |
溶媒抽出法・イオン交換法は、金属の分離・精製のみならず、水の精製、工場排水の処理など多くの用途で使用されている。近年は、特定のイオンの選択性を高めた吸着剤・官能基の開発が盛んである。吸着反応・交換反応は、官能基の特性に依存すると共に、吸着前の水溶液中でのイオンの分布にも強く依存する。しかしながら、熱力学的解析はいまだ充分ではない。そこで、本論文では、塩酸溶媒中における陰イオン交換反応の熱力学的解析に必要不可欠な、銅(II)クロロ錯体の分布と構造を、紫外可視吸収スペクトルとX線吸収スペクトルを主成分分析と熱力学モデルのフィッティング解析、およびX線吸収微細構造スペクトルの解析により決定した。銅(II)クロロ錯体は、[CuII(H2O)6]2+、[CuII(H2O)5Cl]+、[CuIICl2(H2O)4]0、[CuIICl3]−、[CuIICl4]2−の5種類が存在することが確認された。さらに、[CuII(H2O)6]2+、[CuII(H2O)5Cl]+、[CuIICl2(H2O)4]0の構造を軸方向に伸びた八面体構造、[CuIICl3]−は平面三角形構造、[CuIICl4]2−のが正四面体構造であることを決定した。
今後の溶媒抽出法・イオン交換法の解析に期待される。 Uchikoshi, M and Shinoda K: Determination of structures of cupric-chloro complexes in hydrochloric acid solutions by UV-Vis and X-ray absorption spectroscopy, Struct. Chem., 30(1), 61–74 (2019). https://doi.org/10.1007/s11224-018-1164-7 http://rdcu.be/qduW ←このリンクからも論文を読むことができます。ただし、ダウンロード、印刷はできません。 |