溶液におけるある物理量の過剰量とは、実在溶液の混合量と理想溶液の混合量の差として定義される溶液の非理想性の尺度である。従来の金属溶液論では、過剰量は、原子間の相互作用を反映するため、過剰体積VEと過剰ギブズエネルギーGE間には、正の相関が有るとされてきた（図1）。しかし、我々の開発した高精度な溶融合金の密度測定から、Pt族と遷移金属からなる2元系合金には、過剰体積と過剰ギブズエネルギー間に負の相関が有ることを明らかにし、さらにこれら合金系は、規則ー不規則変態を呈するという状態図上の共通点（図2）があることを発見した。本研究では、状態図上の共通点だけでは理解し難いこの負の相関について、高精度な熱力学的測定および熱物性測定による実験データに基づくとともに、新たなアプローチとして精密光電子分光測定による電子構造の観点から考察を加えることによってその起源を解明し、新たな金属溶液論を構築することを目的とする。
研究成果
H. Fukuyama, M. Watanabe and M. Adachi
Recent studies on thermophysical properties of metallic alloys with PROSPECT: Excess properties to construct a solution model
High Temperatures-High Pressures, vol. 49, (2020) 197–210
DOI: 10.32908/hthp.v49.851
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| 図1 VE-GEの関係から発見した負の相関と新たな金属溶液論の展開 | 図2 溶融Pd-Fe合金の密度とモル体積の組成依存性と状態図上の共通点 |