鉄鋼業などの高温プロセスにおいて,測定対象の温度を正確に計測・制御することは非常に重要である.実際の製造プロセスでは,測定対象に接触不可能である場合が多いことから,非接触温度計測技術が必要不可欠になる.
一般的な非接触温度計測法では放射温度計を用いるが,測温には対象物の放射率が必要であり,放射率は波長,温度,表面状態によって変化するため,この値が一定でない限り正確な温度が得られないことになる.
放射率フリーの非接触温度計測法は,表面状態や温度変化に依存する放射率を用いない温度計測法であり,本温度計測技術が確立されれば未知の高温融体の温度を容易に計測できることになる.また,本温度計測技術は非接触の温度計測が必要不可欠な高温プロセスでの利用が期待され,測温精度の向上により精密な温度制御が可能となる.
当研究室では高温融体の熱物性値を高精度に測定可能な静磁場印加型電磁浮遊法を利用した超高温熱物性計測システム (PROSPECT) を開発している.本装置では試料温度を放射温度計により測定しているが,放射率や融点が未知の物質では正確な温度計測ができない問題がある.
一方,産業技術総合研究所の山田らは放射率フリー温度計測技術として補助光源を用いた2波長反射率比(DWR)法を開発している.
そこで,DWR法を電磁浮遊金属液滴へ適用について産総研と共同研究しおり,電磁浮遊金属液滴に対してDWR法を適用するための課題抽出を行っている.