ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 05
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TAGEN FOREFRONT 05
FOREFRONT REVIEW01未来の社会を明るくする光と電子の機能融合デバイス開発FOREFRONT REVIEWInGaN青色発光ダイオードが2014年ノーベル物理学賞の対象となり、ますます重要視されるようになった光・電子デバイス。秩父研究室では、原子サイズのレベルで平坦な単結晶薄膜を成長するエピタキシャル成長法や超短パルス集束電子線を用いた時間・空間同時分解分光等を駆使し、光と電子系の機能を融合するワイドバンドギャップ半導体光デバイス・材料の研究を行っています。多元物質科学研究所量子光エレクトロニクス研究分野教授秩父重英CHICHIBU, Shigefusa1963年、東京都生まれ。(株)東芝総合研究所電子部品研究所に勤務の後、慶應義塾大学大学院理工学研究科電気工学専攻博士課程修了。博士(工学)。東京理科大学理工学部電気工学科嘱託助手、筑波大学物理工学系助教授を経て2007年より現職。この間、通産省工技院電子技術総合研究所非常勤研究員、独国立ハーンマイトナー研究所訪問研究員、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校材料科学部常勤訪問研究員、理研フォトダイナミクス研究センター非常勤研究員、科学技術振興機構ERATO中村不均一結晶PJ評価グループリーダー兼務。応用物理学会会員。1996年第1回応用物理学会講演奨励賞、2008年度JJAP論文賞、2009年市村学術賞功績賞、2010年度文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/chichibu/index-j.html秩父研究室の研究テーマは「光と電子の機能融合デバイス開発」であり、新材料の持つ機能や、それを有効活用する構造を見い出すことです。光子系(電磁場)と電子系(電子と正孔のペア:励起子)の機能を融合するため、バンドギャップエネルギーが大きく環境負荷の少ない、窒化ガリウム(GaN)や酸化亜鉛(ZnO)を基盤とするワイドバンドギャップ半導体光デバイス・材料に関する研究を進めています。電磁波は、波長によって様々な用途が広がります。各種物質の光励起や消毒殺菌に応用が期待される波長200nm台の深紫外線から、色の再現性が良く品質の高い照明を実現する近紫外線や可視光線、そして光通信など多種用途を持つ近赤外線までの広い波長範囲の光源を作りたい。それらの波長に対応するバンドギャップを持つ、AlN、GaN、InN等のⅢ族窒化物半導体や、日焼け止めと成分が殆ど同じで安価に紫外線・青色発光ダイオードやコヒーレント光源を作れる可能性のあるZnO、MgO等のⅡ族酸化物半導体、さらにはTiO2等の金属酸化物半導体を扱っています。これらの材料の高品位単結晶薄膜形成技術の開発に力を入れており、有機金属化学気相エピタキシー(MOVPE)法、アンモニアソース分子線エピタキシー(NH3?MBE)法、そして独自開発のヘリコン波励起プラスマスパッタエピタキシー(HWPSE)法等を用います。いずれも、原子層レベルで平坦な表面・界面を持つ半導体超薄膜や、量子サイズ効果が現れるナノ構造のエピタキシャル成長が行えます。秩父重英教授は、MOVPE法を用いて1993年に実現され、2014年ノーベル物理学賞の対象となった「窒化インジウムガリウム(InGaN)高輝度青色発光ダイオード(LED)」の物性評価を行い、既存の材料では全く光らないほど欠陥密度が高くてもInGaNは明るく光るという特異なメカニズムを世界に先駆けて解明しました。この研究を通じ、メゾスコピック・ナノ構造における励起子の動きや量子効果の動的な評価を更に進んで行うことが必要と考え、微細領域の光物性を明らかにする先端的計測技術(フェムト秒パルス集束電子線励起による時間・空間同時分解分光)の開発を継続しています。5 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT6