ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 05
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TAGEN FOREFRONT 05
FOREFRONT REVIEW07安定性と高い機能を目指して全固体電池の開発に挑むリチウムイオン電池の安全性の課題に向き合うここでリチウムイオン2次電池の基礎についてふれておきます。「リチウムイオンが動くというのが絶対条件。正極・電解質・負極の3つの要素の中で、正極・負極はイオンも動くし、電子も動かないといけない。ただ電解質では絶対電子が動いてはいけ教授は、リチウムイオン電池の厳しい条件について説明します。固体でイオンが動くのは、結晶、ガラス、ポリマー(高分子化合物)があります。「結晶はイオン伝導度は高く、電池の素質はあるけども、1ミクロン以下の薄膜にしようとすると結晶の方位が揃わなくて、隙間ができてショートしてしまう。ポリマーは薄く塗布できるのでいいが、不安定という欠点がある。3ボルト、4ボルトというのはかなりのエネルギーで、有機物は分解してしまうんですね」。残るのが無機化合物であるガラス。「安定的なガラスがいちばんいいと、私は主張しています。ただイオンの動きがもっといい材料を開発していく必要があります」。電解質が不安定ということは、かつてリチウムイオン電池が異常発熱や異常発火などの事故を招いたということと同じ問題です。基本的に現状のリチウムイオン電池は液体の電解質を使っているため、不安定で次第に劣化する、また液漏れが発生する可能性があるという安全面の課題がありました。このことが実は、液体電解質ではなく固体電解質を使った全固体型リチウム電池の開発が急がれている背景となっているのです。ムイオン伝導体をレーザー蒸着法で薄膜化し、その電気的・光学的物性および電池特性を研究しています。「全固体薄膜リチウム電池は1980年代に日本のメーカーで開発したが、当時は半導体の消費電力が大きくて使い物にならなかった。その後、日本では開発の動きが下火になり、2005年頃から米国が開発の舞台となっている」と言います。河村教授は「東北大学に移った頃に、全固体電池はもともと日本のオリジナルであり固体イオニクスの夢ですから大学で研究を続けておきたいね、という気持ちで取り組み始めた」と話します。河村研究室の全固体薄膜リチウム電池開発の成果は、着実に進展しています。「液体電解質の電池の電圧は3.5ボルトが限界で4V以上は難しいが、固体では可能。私たちは2013年に5Vを実現した。さらに今、6Vを目指しています」。リチウムイオン電池材料として、さまざまな実験手法の対象となる金属や化合物は、大気中で他の分子と反応して状態を変化させることが多いため、真空環境をつくり、試料表面を制御された状態に保つ。も先端的研究を進めているグループの一つであると言えます。いま日本では、リチウムイオン電池関連の国家プロジェクトが2つ動いています。1つはNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進するプロジェクト「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING事業)」。その高度解析技術開発グループにおいてNMR、MRI解析の手法で河村グループが参画しています。もう1つ、JST(独立行政法人科学技術振興機構)が推進するALCA(先端的低炭素化技術開発)の重点技術領域における次世代蓄電池全固体電池チームに桑田直明助教が参加しています。河村研究室では、全固体薄膜リチウムイオン2次電池の材料開発と物性研究、核磁気共鳴法による固体内イオン移動の研究という主要テーマに加え、将来の水素エネルギー時代に向け、水素燃料電池、水素・酸素製造装置などの研究も進められ、固体イオニクスがもたらす次世代エネルギー技術の創製に大きな期待が寄せられています。TERM INFORMATION正極・電解質・負極電池の基本3要素。電池を使うとき(放電時)にプラスになる方が正極、マイナスになる方が負極。リチウムイオン二次電池の場合、正極にはLiCoO 2などのリチウム遷移金属酸化物が使われ、電解質にはエチレンカーボネート等の有機液体にLiPF6等のリチウム塩を溶かした有機電解液、負極にはカーボンが使われている。固体電解質(Solid Electrolyte)高校の化学の教科書には、「イオンは液体の中では動けるが、固体の中では動けない」とされ、「食塩の水溶液中では、Na+とCl?が電離して電気を伝えるが(電解質)、NaCll結晶は電気を通さない」とされている。しかし、最近では、固体でありながらイオンを通す物質が次々にみつかり、これらを一般的に「固体電解質」と呼んでいる。その中でも特に優れた物質は、超イオン伝導体ともよばれる。リチウム電池分野で固体電解質と呼ぶのは、特に液体電解質と区別したり、正極・負極のような電子・イオン混合伝導体と対比するためでもある。下記のSEIや高分子固体電解質のように、ここから更に派生した言葉もある。ない、動いたらショートしてしまう」と河村薄膜リチウム2次電池材料の作成をするためのレーザー蒸着装置。有機電解液の代わりに固体電解質を用い、基板上の厚さ1?2μmの中に、電極、正極、固体電解質、負極、電極の各素材をレーザー光によって蒸着させる。PLD法(PulsedLaserDeposition)は、パルスレーザー光を試料物質に照射して瞬間的に昇華させ、基板上に堆積させて試料物質の組成をそのまま転写させる。日本の開発技術をさらに前に進める研究従来のリチウムイオン2次電池の弱点であった安全性についての課題を解消するのが、電池の構成に液体をまったく含まない全固体型リチウム電池。河村研究室では、安全性向上という目的とともに、マイクロデバイス用微小電源への応用を目指し、全固体薄膜リチウムイオン電池の材料開発と基礎物性研究を行っています。具体的には、LiCoO2(コバルト酸リチウム)やLi3PO4(リン酸リチウム)などのリチウ国家プロジェクトに参画し次世代技術の創出へ固体イオニクス分野で先導的な研究実績を重ねている河村研究室は、日本で最SEI固体電解質界面層Solid Electrolyte Interphase(またはinterface)の略で、リチウムイオン電池の秘技の1つ。リチウムイオン電池では、正極と負極の間には3?4Vの電圧がかかるため、水は電気分解して使えない。そのため、炭酸エチレン等の有機溶媒にフツリン酸リチウムなどの塩を溶かして電解質としている。ところが、この有機溶媒も負極のカーボン表面で還元分解されたり、正極表面で酸化され、電池の劣化や安全性の低下につながる。そこで、高純度な電解液に僅かの添加物を加え、さらに初期化とかエージングなどと呼ばれる(各社独自のノウハウ)処理を行うことで、負極や正極と電解液との界面に薄い皮膜を形成し、それ以上の分解を抑えている。この皮膜は、丈夫でありながらリチウムイオンだけを通す固体電解質であり、Solid Electrolyte Interphase(SEI)と呼ばれている。全固体薄膜リチウム電池リチウム電池の構成要素である、正極、電解質、負極のうち、通常使われる電解液を固体電解質に置きかえたものを「全固体リチウム電池」と呼ぶ。通常は粉末を固めて普通の電池の大きさにするが、半導体製造技術を用いると、1ミリ角で厚さ1ミクロンくらいの極めて薄くて小さな電池を作り、マイクロ電子機器に埋め込むことができる。この技術は、1982年に日本の日立製作所で最初に発表された。最近、ウェアラブルや体内埋込型の超小型電子機器が登場し、再び大きな注目を浴びている。考えているようで考えていない、そんな境地が楽しい知恵の輪パズルやオモチャ、特に「知恵の輪」が好きです。子どものときから好きでしたが、「キャストパズル」が出てからは、新製品が出るとすぐに買ってほとんどやりました。外すまでカチャカチャとやってみるのが楽しい。なんか考えているようで考えていない、座禅のような境地がいいですね。スッとできたときは、何ともうれしい。外した後に元の形に戻す苦痛も楽しい。段ボールにたくさん取ってあります。だいぶ人にあげたものもありますが、傑作は残してあります。まだできてないのが確か2つだけありますね。OFF TIMERISING事業の高度解析技術開発グループにおいて河村グループは、蓄電池研究用高度解析技術の研究開発領域で参画。NMR、MRI解析の手法で電池内部のイオン分布を直接観測し、電池反応時にイオン分布の変化から電極での反応速度やイオンの拡散係数などの定量化に成功しています。45 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT46