ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 05
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TAGEN FOREFRONT 05
FOREFRONT REVIEW07TERM INFORMATION超イオン伝導体超イオン伝導体の探求から新しい電池の技術を開発イオン伝導性をもつガラスがある固体イオン物理学、たとえばガラスの中でイオンがどのように動くのか。河村純一教授は、北海道大学時代の研究以来、固体イオンの基礎物性研究に取り組んでいます。「ガラスは、ふつう絶縁体と思われています。原子がガチガチに固まったのがガラスで、イオンが動くはずがないと」。ところが、ある特殊なガラスではイオンが動きます。これを「超イオン伝導体ガラス」と言います。どんなガラスでも、溶かして液体にするとイオン伝導性が現れます。しかし固体では、普通のガラスはイオンが動かず、特定の化学結合をさせたガラスでのみイオン伝導性が見られます。ガラスは均一であるという特徴を持っていますが、超イオン伝導性ガラスは、外見は均質でも「さまざまな実験結果や理論研究の成果を総合すると、ナノメートル程度の非常に小さい空間スケールでは、必ずしも均一ではないことがわかっている」と河村教授は話します。つまり「超イオン伝導性ガラスは、ミクロ的には不均一リチウムイオン2次電池の仕組み。放電時は負極の炭素材料からリチウムイオンが電解液中に抜け出し、正極の結晶構造に挿入され、外部回路に電流を取り出す。充電時は、電流の移動に伴って正極の結晶構造からリチウムイオンが電解液中に抜け出し、負極の炭素材料に挿入される。構造を持ち、イオンが通りやすい柔らかい部分、伝導チャンネル領域が存在する」ということになります。「超イオン伝導性ガラスとなる物質は、異なる化学結合が混在するガラスで多く見られることから、化学結合の微妙なアンバランスが結合の不安定性をまねき、超イオン伝導性をもたらす、というのが最近の見方」と話します。日本の先端科学を担う固体イオニクスこのように、固体中のイオンの振る舞いについての研究、具体的には超イオン伝導体をはじめとする固体電解質とその応用についての研究分野を、固体イオニクスと言います。全国の第一線研究者が集まる日本固体イオニクス学会(1977年設立)が組織されていて、河村教授は副会長としてこの分野をけん引する要職を担っています。固体イオニクスは現代の先端科学を担う重要な学問分野となりつつあり、日本における研究と技術開発は世界的にも注目されています。実際には固体物理、固体化学、電気化学、無機化学、材料工学など多くの分野を扱う複合科学と言うことができます。「超イオン伝導体を応用したものとしては、近年注目されているリチウムイオン2次電池や燃料電池、さらに全固体薄膜電池などがあり、私たちの研究の中心的なテーマとなっています」。イオンダイナミクス計測システム室にて「河村研」オリジナルトレーナーを着用する研究室メンバー。ここには3台の固体多核NMR装置が設置されている。超イオン伝導体や固体イオニクス材料は、無機固体の中をイオンが動き回る物質なので、構造とダイナミクスを原子ごとに直接調べることのできる多核固体NMRは非常に強力な研究手段になる。NMRイメージングによるの生成、電解液の電気対流など、電池物性評価や開発の中で様々な現象が起こっている事を見河村研究室における固体イオニクス研いだしています。究では、固体中のイオンの動きに関する基河村教授にとって、NMRの取り組みは、礎的な研究の知識と技術を活かし、リチウもう30年以上になります。NMRは単純なムイオン電池や燃料電池、さらには次世代装置のように見えますが、電池の研究用革新電池の開発に必要な材料評価・特性に使うのは意外に難しいといいます。微評価・劣化診断などの研究を進めていま弱な電波で調べる装置なので、電池のす。最近は特に、NMR(核磁気共鳴)を利充放電装置の干渉や周囲の電波をひろっ用したリチウム電池・燃料電池内部の可てノイズが入ってしまう。あるいは、磁気視化技術(NMRイメージング)開発に取り勾配を作るときに発生する音によって、試組んでいます。料が振動を起こし、画像がぶれる。「正2009年、河村教授のグループはMRI確な撮影を阻害するいろいろな要因をい(磁気共鳴断層撮影法)を使って、リチかに除去するか、シールドしたり、フィルウム電池の内部撮影に世界で初めて成ターをつけたり、現場の研究者は、さまざ功しました。通常のプロトン画像とともに、まな工夫を行っています」。時には、何ら従来感度が低く検出が困難だったリチウかの付帯設備を自分たちで作製しなけれムイオンの画像測定も実現できました。こばいけないこともあるといいます。の成果によって、リチウム電池の中でのリ「そのような場合に大きな力になってくれチウムイオンの分布や、充電・放電を繰るのが多元研の付属工場です。機械工り返した場合の電解液の分解やガスの発場とガラス工場があって、ほんとうに実用生などを検出することができるようになり、的なスキルを持った技術職員が、私たちリチウム電池の安全性向上や劣化防止や学生の相談に乗ってくれて、的確な装技術の開発に寄与するものとなりました。置や設備の製作が可能になっています」。最近では、マンガンイオンの溶出やSEI結晶やガラスなどの固体でありながら、その中をイオンが高速で動く物質。固体電解質とも呼ばれるが、イオン伝導度が10-3S/cm以上あると超イオン伝導体(SuperionicConductor)と呼ばれる。α?ヨウ化銀やナトリウムβ-アルミナなどが知られ、最近は硫化リチウム・ゲルマニウム・リンの結晶やガラスで高いリチウムイオン伝導性が見つかっている。固体イオニクス固体の中でイオンが動く現象に関する基礎と応用研究の分野で、1960年代に名古屋大学の(故)髙橋武彦教授により命名され、国際的にはSolidStateIonicsとして広く普及している。基礎分野としては、物理・化学・材料科学・電気化学など幅広い分野にまたがり、応用分野も、リチウム電池、ナトリウム電池、燃料電池などの他、化学センサー、酸素透過膜、水素透過膜、空気浄化膜…、更には生命科学や地質・惑星科学にまで及ぶという、まさに多元的な研究分野である。リチウムイオン二次電池リチウム電池には、使い捨ての一次電池と、何度も充電できる二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、正極にLiCoO2等の遷移金属酸化物、負極にカーボンが用いられ、何度も充電・放電を繰り返すことができる。スマホやiPadが実用化した裏には、リチウムイオン二次電池の発明がある。世界で最初に商品化したのは、1991年ソニーの福島工場だ。そこで正極に使われたLiCoO2を1979年に見つけたのは、当時イギリスのグッドイナフ教授の下で研究していた、東芝の水島公一博士だった。また、負極にカーボン(炭素)を使い、有機電解液を使う現在のリチウムイオン電池の原型は、旭化成の吉野彰博士により1985年頃に開発された。リチウムイオン二次電池は、まさに日本発の技術と言う事ができる。NMR(核磁気共鳴)Nuclear Magnetic Resonanceの略。物質を構成する原子の原子核が持つスピンに電波を当てて、そこから放出される微弱な電波を調べる事で、物質中での原子やイオンの状態(まわりの構造や動きなど)を知る技術。水素の原子核プロトンに高い感度を持つため、主に有機化学や製薬などで使われるが、近年は、超伝導磁石やデジタル処理技術の進歩により、リチウムやシリコンやリンなど多くの元素にも使えるようになり、セラミックスやガラスやナノ物質などへの利用も急速に進んでいる。NMRイメージングとMRIMY FAVORITE1980年代からMac信奉者。当時のマシンは今も健在私は30年以上のMac党で、今のMacBookProRetinaまで、10台以上使ってきました。学生時代から電気回路やワンボード・マイコンにはまり、MZ?80、PC?8001、FP?1100、PC?88、98と来た頃に、アメリカからMacintoshのニュースが届きました。日本では1985年頃にキャノンリチウム電池の内部撮影に初めて成功が輸入代理店となりDynaMacが販売され始めました。当時、日本では100万円以上しましたが、した時の画像。左がプロトン画像、右がリチウムイオン画像。Mac512Kを背負ったEvangelist(伝道師)の友人が毎日デモに来たため、遂に私も貯金をはたこの技術を用いて、リチウム電池の中でいてMacPlusを購入。いっしょに北海道Macユーザー会をつくり伝道に歩きました。鈴木章先生のリチウムイオンの分布や、充電・放電(後に2010年ノーベル化学賞)のところにもデモに行きました。当時のマシンは、今も2台大切にを繰り返した場合の電解液の分解やガ残しています。スの発生などを、MRIの画像として検出することができる。NMRの技術を利用して、人体の内部を画像診断する方法はNMRイメージングとかMRI(MagneticResonance Imaging)と呼ばれ、発明者のLauterburとMansfieldは2003年にノーベル医学賞を受賞した。今では、大きな病院には設置されて、頭や胴体の内部を画像化するのに使われている。これは、体内の水分や油に含まれる水素の原子核プロトンのNMRを使っている。X線CTに較べて柔らかい組織(血流の流れや神経のつながり)がよく見えるのが特徴である。研究用のNMRの強力な超電導磁石を用いると、医療用MRIよりも更に細かな構造を見たり、プロトン以外の原子核(例えばリチウムやフッ素など)のNMR信号から画像を構築でき、燃料電池やリチウム電池の動作中の様子を直接観察する事ができる。これらの技術は、NMRマイクロイメージングとかNMR顕微鏡などと呼ばれ世界中で開発が進んでいる。43 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT44