ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 05
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TAGEN FOREFRONT 05
FOREFRONT REVIEW06時間分解電子運動量分光装置の概念図。本装置は(1)メインチェンバー、(2)大型排気ポンプ、(3)超音速分子線源、(4)超短パルスポンプレーザー、(5)超短パルス電子線源、(6)全方位角2π型画像観測電子運動量分光器、及び(7)多次元同時計測電子回路の7つの設備からなります。反応を司る分子軌道の形状変化の実時間観測という物理化学者全体の夢を叶える配向と位相の研究など、電子運動量分光を用いた分子軌道形状の精密観測の実績と経験を踏まえて、過渡不安定状態をも対象とする「時間分解電子運動量分光」へと展開。これにより、化学反応を先導する形で起こる物質内電子の運動の変化、すなわち過渡系電子波動関数が運動量空間において時間発展する様を「スナップショット的」に観察する手法として開発・確立することを現在、進めています。「時間分解電子運動量分光」の開発により、あらゆる分子反応を根源的に司る分子軌道の変化の動画撮影が可能になりつつあります。TERM INFORMATION時間分解電子運動量分光電子運動量分光と超高速ポンプ・プローブ法を高度に組み合わせた手法。分子軌道の空間的形状を運動量空間で時間分解イメージングすることが特徴。この分光技術は、これまで実現が困難であった新規研究の開拓と展開を可能とする。例えば、超短パルスレーザー誘起の光化学反応を対象とできれば反応の根源を司る“Molecularorbitalmovie”の撮影が、各種気相分子配向技術と組み合わせることができれば分子軌道の自由自在な3次元マッピングがそれぞれ行えることになる。「時間分解電子運動量分光の開発によって化学反応が進行するにつれ時々刻々変わっていく分子軌道の形が見えるようになり、励起エネルギー移動、電子移動、プロトン移動、異性化反応など単分子の動的過程に対して従来とはまったく異なる視点から研究を行う反応動力学分野の開拓ができると期待しています」。極めて弱い信号強度などの実験的困難を克服するためおよそ10年に亘る試行錯誤を積みかさねた結果、実験の統計やエネルギー分解能など装置性能に改善の余地を大きく残すものの、ごく最近ようやく時間分解電子運動量分光実験を世界に先駆けて具現化しました。「化学反応を根源的に司る物質内電子運動のスナップショット観察、言い換えれば、化学反応の“Molecularorbitalmovie”の実時間撮影が可能になりつつあります」。創造」という発想。「分子の多種多様な物理化学的性質の源泉の解明を通じて分子を深く知り、それらを自在に操ることが分子科学の究極の目標です。独自の視点から、生命・宇宙現象などの広範な自然現象の研究の深化にとどまらず、これを通じて工学、医学など我々の生存に密接に関係する多くの学問分野を支えていきたい」と髙橋教授は語ります。分子が作り出す自然現象の真理や基本原理の理解。髙橋教授の目指すところは、自然の豊かさの源と我々の存在の拠って立つところを探索し、人類全体の文化的あるいは知的財産・創造活動へ貢献していくことだと言います。「これまで理論計算を通じてのみしか伺い知ることのできなかった様々な環境の中での分子軌道の形が、今、実験的に精密観測ができるようになりつつあります。近年のレーザー技術の進展によりもたらされた新しい形の『光化学反応』や『光と物質の相互作用』の本質的理解など分子科学の限界の突破に挑み、さらには人類の未来を切り拓く力の源に資する基盤的概念の構築を目指しています」。スナップショット的に観察する手法時間分解電子運動量分光へと展開髙橋研究室は現在、分子軌道の運動量空間観測というユニークな特徴を自然科学の広範な分野で発揮することを目指して、電子運動量分光の飛躍的展開を図るための挑戦的課題に取り組んでいます。その一つが、時間分解電子運動量分光法の開発です。私たちの身の回りには物質が光を吸収して起こす反応、光化学反応が多種多様な形で存在しています。そうした光化学反応が時々刻々進行する様を分光学的に調べる時間分解分光研究は1949年のロナルド・ノーリッシュとジョージ・ポーターによるフラッシュ・フォトリシス法の開発以降、超短パルスレーザー技術の進歩と共に急速な発展を遂げ、官能基の振動数、電子状態、および分子構造の変化など化学反応を実時間で観測したいという物理化学者全体の夢の一つが現実のものとなりつつあります。「これら先駆的な数々の素晴らしい研究に対して、髙橋研究室では、化学反応は物質内電子の運動が先導して起こる原子核配置の変化であると定義づけ、分子軌道の形状の変化そのものを観測します」。髙橋研究室がこれまで進めてきた、分子軌道の運動量空間における3次元観測、分子振動による電子軌道の歪み、分子軌道を構成する原子軌道の空間的数々の試行錯誤の結果時間分解電子運動量分光実験を世界に先駆け具現化髙橋研究室が世界に先駆けて開発した時間分解電子運動量分光装置は、フェムト秒レーザーシステム、真空チェンバー、排気ポンプ、超短パルス電子線源、分子線源、超大型電子運動量分光器、多次元同時計測システムから成っています。まず、超短パルスレーザーを分子線中の孤立分子に照射し、光化学反応を起こさせます。このレーザーによる化学反応開始の瞬間からの遅延時間の関数として超短パルス電子線を反応中途の過渡分子に入射し、その分子軌道一つ一つの形状を運動量分光法により観測します。分子理解の深化に向けて様々な学問の基盤づくり「時間分解電子運動量分光をさらに進化させることにより、化学反応は何故そのように起こるのかに対する本質的理解に挑み、さらには分子を自在に操るための基盤的概念の構築に寄与できるものと考えています」。キーとなったのは「欧米追随型でない、新しい研究の潮流の髙橋研究室では、化学反応は物質内電子の運動が先導して起こる核配置の変化であるとして、物質内電子の運動の変化そのものを観測します。こころが癒やされるガーデニングにはまっています最近ガーデニングにはまっているのですが、食卓に出す野菜や果物を作る実益園芸と鑑賞するだけで豊かになれる幸せガーデニングの両方をやっています。先週末もピンク色の小さな八重の花をたくさんつけるサザンカを植栽しました。同じ方向に巻いているホップのツルをほどいて逆巻きにしてみたり、バラのシュートの成長具合を毎朝観測したり、遊びに来る小鳥たちをバードウォッチングしたり、色々な形でガーデニングを楽しんでいます。これからも少しずつ手を加えていって、私にとってもっと居心地のいいナチュラルガーデンにしていけたらいいなと思っています。OFF TIME分子科学は、広く原子および分子の構造・物性・反応を研究する学問分野です。髙橋研究室は、そうした分子科学に関する先駆的実験研究の推進とともに、科学・工学の様々な分野で次世代を担う学生・若手研究者の育成を目標としています。39 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT40