ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 05
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TAGEN FOREFRONT 05
FOREFRONT REVIEW05最先端光源を駆使して原子と電子の動きを捉え、化学反応を制御するFOREFRONT REVIEW粒子性と波動性との二面性を示す電子および光の振る舞いや物質との相互作用について見極めたい。上田研究室では、様々な新しい計測法と最新の光源による電子・分子ダイナミクスと分子イメージングの研究を世界中の仲間たちと行っています。目指すところは、化学反応中の分子動画を撮り、電子波束の動きを捉え、反応を制御することです。多元物質科学研究所電子分子動力学研究分野教授上田潔UEDA, Kiyoshi1954年、大坂府生まれ。京都大学大学院工学研究科後期課程終了。工学博士。東北大学科学計測研究所助手、米国メリーランド大学在外研修、英国ダーズベリー研究所客員研究員、フランスパリ南大学客員教授、東北大学科学計測研究所助教授、2003年より現職。日本物理学会・化学会・放射光学会・分光学会・分子科学会・原子衝突学会に所属。米国物理学会の国際評議員、米国・ドイツ・イタリアの自由電子レーザー施設のプロポーザル評価パネル、ドイツマックスプランク研究所評価委員、英国第4世代光源・次世代光源プロジェクト諮問委員、英国科学雑誌(原子分子光学物理学)の編集委員、多くの関連国際会議の議長、諮問委員、プログラム委員等を歴任。上田研究室の成果をもとにした量子力学の教科書に載るような新しい実験が報告されました。20世紀物理学の巨人、アインシュタインとボーアの間で1930年前後に展開された量子力学の解釈論争?2重スリット実験において、粒子(電子や光子)がスリットを通過するときの運動量移動を測定すると、スリットの位置に不確定性が生じて干渉現象は消滅するか?その論争で使われた2重スリットの思考実験を分子レベルで実現することに上田教授を中心としたグループが初めて成功しました。2重スリットを2個の酸素原子に置き換えた巧妙な実験で、フランスの中型高輝度放射光施設Soleilの最先端の軟X線ビームラインで、酸素分子を励起し、放出された電子と電子放出で生成されたイオンの運動量を同時に計測し、酸素分子から解離した酸素原子と、高速電子との間の運動量の交換を測定することに成功しました。その結果電子の経路が指定できた場合には干渉縞が消え、電子の経路が観測できない場合には干渉縞が現れることを初めて実証し、ボーアの反論を裏付ける結果となりました。この実験は量子過程の計測や制御の進歩にも大いに役立つと期待されてます。量子過程は粒子が波としての性質を持つことに由来する量子干渉の存在により古典過程とは異なった振舞いを示します。微小世界では量子干渉を制するものが世界を制するといっても過言ではありません。上田研究室では、サブナノスケールの分子やクラスターにおける電子緩和・電子移動・解離・原子移動・原子再配列といった超高速反応を決定付ける量子過程を解析し、制御することを目指しています。単一分子の量子過程を見るために、独自の最先端計測技術を提案・開発し、研究に供しています。また、量子過程を引き起こしたり、画像化したり、制御したりするために、超短パルスレーザー、世界最高分解能軟X線放射光、世界でまだ2ヶ所でしか稼動していないX線自由電子レーザー等の最先端光源を駆使して、研究を進めています。http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/ueda/index-j.html29 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT30