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概要

TAGEN FOREFRONT 05

FOREFRONT REVIEW04コンピュータ計算解析により新しい材料開発に挑むFOREFRONT REVIEW熱力学は物理学、化学、工学などの学問分野の礎であり最も学際的な研究領域です。近年の量子力学に立脚する電子論計算法の目覚ましい発展により、実験では決して確認できない熱力学的物性値を人工的に作り出すことを可能にしました。大谷研究室では、こうした計算手法によって材料物性の探求を展開し、一方で得られた熱力学物性値を高い実験精度で検証を行い、磁性体や半導体、次世代のマテリアル開発、融体やガラスの物性評価、状態図計算など、材料学の新しい取り組みに挑戦しています。多元物質科学研究所無機材料研究部門計算材料熱力学研究分野教授大谷博司0HTANI, Hiroshi1955年仙台市生まれ。1980年東北大学工学部卒業、1985年東北大学大学院工学研究科博士課程修了、1996年東北大学助教授、2002年九州工業大学工学部物質工学科助教授、2008年九州工業大学大学院工学研究院教授、2014年東北大学多元物質科学研究所教授。日本金属学会、日本鉄鋼協会、米国TMS。2014年3月日本金属学会谷川・ハリス賞受賞。http://www.tagen.tohoku.ac.jp/modules/laboratory/index.php?laboid=88新しい材料の創製、あるいは新規な物性の開拓など、材料物性研究においては、なんらかの物を作り出したり、変化させたりというアクションを伴っています。しかし、こうした作る行為ばかりではなく、計算という手法によって、材料の設計開発をしていこうというアプローチがあります。それが計算材料科学と呼ばれる研究分野です。たとえば数10種類の有用な元素から2つを組み合わせて化合物をつくろうとするときに、限りない組み合わせの数が存在します。その一つひとつについて濃度を変えたり、熱処理の温度を変えてデータを取る、というのが通常の実験手法だとすれば、それだけで膨大な時間と労力がかかることになります。それを、計算によるコンピュータ解析を使ってできるだけ効率的に的を絞りこんでいこうというのが、計算材料科学のアプローチです。量子力学による計算手法が進展してきたこと、かつてのスーパーコンピュータレベルの計算機を研究室レベルで備えられるようになってきたことなどを背景として、電子論の計算によって材料の物性を調べたり、新しい物性の開発に使えそうだと、近年注目されてきました。実際に計算で作成した複雑な物質の状態図は、実験によって検証してみると、計算通りの組成であることがわかりました。すでに知られた材料物性でも、実はなぜそのような現象が起きるのか判明していないものもありますが、計算によって、今までわからなかった現象の解明の手段ともなっています。わずか10?15年ぐらい前から軌道に乗ってきた分野で、まだ発展途上の段階ですが、コンピュータの性能がいちだんと高まってきている今、材料物性研究をはじめ、さまざまな分野での応用が期待されています。23 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT24