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概要

TAGEN FOREFRONT 05

FOREFRONT REVIEW02門倉広准教授。ジスルフィド結合形成の仕組みを解き明かすため、動物細胞を材料に、細胞生物学、プロテオミクス、化学遺伝学(特異的な阻害剤の探索と利用)などの手法で研究している。タンパク質の品質管理その解明の先には医学的貢献もタンパク質の機能研究には、立体構造の詳細な情報が欠かせない。構造生物学、生物物理学、生化学的な機能解析など、様々な手法による情報を得るため、研究室では、タンパク質精製用高速液体クロマトグラフィー、微量タンパク結晶化ロボット、大型遠心分離機などを備えている。TERM INFORMATION神経変性疾患中枢神経の中の特定の神経細胞群が徐々に死ぬことで発症する脳神経疾患の一つ。原因は未解明な部分が多いが、細胞内に蓄積するアミロイドタンパクなど不良タンパク質が原因の一つと考えられている。代表的なものに、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などがある。タンパク質ジスルフィド結合二つのシステインと呼ばれるアミノ酸に含まれるチオール基が二電子酸化をうけて形成される硫黄原不良タンパク質が引き起こす病気ンパク質が蓄積してくると、細胞にとっても、われわれ個体にとってもストレスになり筋萎縮性障害はトランスサイレチンというタンパク質が原因の一つと言われています。れた立体構造を修復するためには、ジスルフィド結合の組み換えが必要になります。に九州大学生体防御医学研究所時代に、主にタンパク質の立体構造を形成す子間の共有結合。タンパク質分子中で補強金具のように振るまい、出来上がった立体構造の安定化、機能の発現制御などに関わる。多くのタンパク質が立体構造を形成します。そのストレスを軽減しようというシス「遺伝的にアミノ酸に変異を持つ先天的「誤ったジスルフィド結合を開裂(還元)するシステムの解明というテーマで優れた業て安定状態になる一方で、約30%ぐらテムが細胞にはある、ということがかなりな病気を人もいますが、タンパク質の品ることでタンパク質の立体構造を解きほぐ績を上げてきました。2011年度には、「タ小胞体いは立体構造を形成できずに機能不全の状態になるものもあります。おかしなタ明確にわかってきました。「つまり個々のタンパク質に対して、これはまだ働いてもらおう、これはもう使えないので排除しよう、ということを見分ける品質管理システムで質管理がしっかりしていれば、ふつうは病気が防がれています。これら品質管理にかかわるタンパク質の働きを、分子構造レベルで解明できれば、将来的には医学へし、より分解除去されやすい形に変換するタンパク質(酵素)も見つかっています」と稲葉教授は話します。このように、ジスルフィド結合の形成やンパク質の品質管理に関わるジスルフィド結合形成・開裂システムの解明」によって日本学術振興会賞を受賞しました。「タンパク質の品質管理システムには、分泌タンパク質が合成される細胞内小器官の一つ。小胞体の中にはタンパク質の立体構造形成を助ける因子や、不良タンパク質の分解を促進する因子が多く存在し、タンパク質品質管理システムが特に発達していると考えられている。す。それを司るタンパク質がどのように働の貢献もできるようになると言えます」。開裂は、細胞におけるタンパク質の品質もっと広がりがある」と稲葉教授は指摘しいているのかを解明したい、というのが研究の大きな柱です」と稲葉教授。ヒトの細胞内における不良タンパク質排除のメカニズムが解明されれば、医学的な意義が期待されるということになります。立体構造を安定させるS-S結合の役割でき上がったタンパク質の立体構造の内部を調べると、アミノ酸間で多くの結合管理を決定する重要な要素であると言えます。さらに視野を広げてタンパク質を探求ます。たとえば細胞の中には、細胞核、ミトコンドリア、小胞体などいろいろな場所があり、それぞれ水素イオン指数(pH)が違っています。「その違いを利用してタンパク質をコントロールするシステムがあるとたとえばアルツハイマー病やパーキンソンや相互作用が働いていることがわかりま近年の目覚ましい構造生物学の発展にいうことがわかってきました」。また、カル病などの神経変性疾患の主要因のひとつす。そのなかで、ジスルフィド結合(S-Sより多くの因子の立体構造が解かれ、そシウム、亜鉛、カリウム、ナトリウム、マグとして、細胞の中に蓄積した不良タンパク結合)と呼ばれる硫黄原子(S)間の共有れら因子の機能的性質を原子構造レベルネシウムなどの金属イオンは、場所によっ質があると言われています。またその不結合は、その強固な性質のため、タンパで説明できるようになってきました。タンパて濃度が違っていてタンパク質の立体構良品蓄積によってストレスが起きて、糖尿ク質の立体構造を安定化させる上で非常ク質品質管理のためのジスルフィドバイオ造に深く関わっていることもわかってきてい病を引き起こすとも言われています。に重要な役割を担っています。ロジーという分野を開拓し、追求しているます。ヒト細胞におけるジスルフィド結合形成因子の構造とメカニズム/Inabaetal.EMBOJ(2010)ヒト細胞内での蛋白質ジスルフィド結合形成において中心的役割を担うフラビン酵素Ero1(小胞体において機能する酸化酵素のひとつ)の結晶構造解析に成功した事例。原因タンパク質としては、アルツハイマーはベータアミロイド、アルファ-シヌクレインなど。一方で、ジスルフィド結合は本来架かるべきペア間ではなく、誤ったペア間で形成されることもあります。誤って形成さのが稲葉謙次教授です。大学院から一貫してタンパク質を研究し、京都大学ウイルス研究所時代、さらこうして、稲葉教授はタンパク質の品質管理について、さらに視野を広げた研究への取り組みを進めています。仙台はお気に入りの街。これからも東北発見の旅を少しずつOFF TIME仙台に赴任して、まもなく2年になります。来るまではこちらは寒いのではと心配でしたが、思ったほど寒くなく安心しました。仙台の街並みは大好きです。定禅寺通は、歩いたり、車で通ったり、きれいでお気に入りの場所です。郊外では、秋保や作並の雰囲気が好きでよく出かけます。だいたいが忙しい日々になってしまいがちですが、ちょっとエネルギーがあって元気な時は、家族といっしょに東北の各所を見てまわっています。以前はずっと関西や九州にいましたので、東北の自然や文化が新鮮で、これからも少しずつ東北発見を増やしていきたいと思っています。稲葉研究室で立体構造が解かれた代表的なタンパク質。左は大腸菌由来DsbB-DsbA複合体/Ref.:Inaba,K.etal.,Cel(2006)この構造解析により、大腸菌におけるジスルフィド結合形成システムDsbB-DsbAの構造基盤が確立された。右はERdj5/Ref.:Hagiwaraetal.MolecularCel(2011)これにより、ERdj5を介した小胞体不良品タンパク質の分解の機構の一端が明らかとなった。15 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT16