ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 05
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TAGEN FOREFRONT 05
FOREFRONT REVIEW02生体機能を司るタンパク質その維持管理機構を解き明かす試みFOREFRONT REVIEW2013年4月、稲葉謙次教授が多元研に着任して誕生した、新しい研究室です。研究の基本は「タンパク質の徹底研究」。タンパク質は、安定した立体構造を形成して初めて、さまざまな機能を発揮します。また誤った構造を形成し、不良なタンパク質ができてしまうことがありますが、細胞は、生かすタンパク質と不良なタンパク質を排除するという品質管理のシステムを備えています。この巧妙なタンパク質品質管理の仕組みを、分子構造レベルから細胞レベルまで広く探求しようというのが、研究室の目標です。多元物質科学研究所有機・生命科学研究部門生体分子構造研究分野教授稲葉謙次INABA, Kenji1970年京都府生まれ。1993年京都大学理学部化学科卒業、1998年京都大学工学研究科博士課程修了、1998年英国Medical ResearchCouncil博士研究員、2000年京都大学ウイルス研究所博士研究員、2001年JSTさきがけ21研究員、2005年JST CREST研究員、2006年九州大学生体防御医学研究所特任准教授、2011年九州大学生体防御医学研究所准教授、2013年東北大学多元物質科学研究所教授。第8回(2011年度)日本学術振興会賞受賞。http://www.tagen.tohoku.ac.jp/modules/laboratory/index.php?laboid=87ヒトの細胞内の成分は70%が水ですが、その次に多いのがタンパク質で約15%を占めています。このタンパク質は、生体機能を司る重要な役割を果たしています。タンパク質は遺伝子の遺伝情報に基づいて、細胞内で合成されます。ヒトの遺伝子は約2万?3万個と言われ、通常は1つの遺伝子から1種類のタンパク質が転写されて作られますが、1つの遺伝子から複数のタンパク質が作られることもあり、それも入れると約10万種程度とも言われます。細胞内で遺伝情報に基づき合成されたタンパク質は、適切な場所で正しい立体構造を形成することにより、それぞれ独自の機能を発揮します。しかし中には、うまく構造を形成できずに不良タンパク質になったり、合成後に何らかのストレスを受けて不良になる場合もあります。それでもそれら不良品は通常、細胞の中には検出されません。つまり正しく形成されたタンパク質を残し、不良なものは分解・除去しようというタンパク質の品質管理が働いているからです。なぜ立体構造が正しく安定し、なぜ不良なものが排除されるのか。稲葉謙次教授は、タンパク質の立体構造を安定化させるジスルフィド結合に着目し、どのように結合が形成補強され、またどのように結合が解除されるのか、細胞システムの機能発現メカニズムについて、さまざまなアプローチによって解明への取り組みを進めています。こうした研究によって、細胞内でタンパク質の品質がどのように管理維持されているか、基礎細胞生物学的に非常に重要な知見が得られ、さらに細胞の中で機能不全に陥ったタンパク質の蓄積に起因する疾病の成因解明は、将来的には治療法の開発や疾病予防にもつながるものと期待されています。11 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT12