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概要

TAGEN FOREFRONT 05

FOREFRONT REVIEW01てカバーできる発光・受光素子材料として応用が可能なのです。「特に波長200?280nmの、UV?Cとクラス分けされる深紫外線(DeepUltraviolet:DUV)の小型光源には、様々な新しい用途がひらけています。波長が短く、DNAを破壊できるので、炭素菌や、水中のバクテリアの高速殺菌が可能です。この技術は、水道が通っていない、ないしはあっても浄水ではない開発途上国の衛生面の改善や医療現場において寄与できます」。深紫外線は、このような菌やウィルスの殺菌、飲料水・空気の浄化以外にも、高密度光情報記録やバイオセンシング、生体・材料分析、光リソグラフィーなど、幅広い分野で社会を支える重要な基盤となると期待されています。しかし、現存する深紫外線光源はサイズが非常に大きく、消費電力も大きいことから、小型・低消費電力の半導体固体光源への置き換えが求められています。この課題を解決するために、深紫外線LEDはもとより、レーザ発振が始まるときのしきい値電流密度の低い紫外線コヒーレント光源を開発するなどの研究が必要となります」。秩父研究室では、紫外線発光デバイスの発光効率向上を目的として、計算によって最適化された半導体量子井戸構造を形成する研究を進めています。このため、AlInGaN系窒化物・MgZnO系酸化物半導体多層超薄膜デバイスの形成技術が必要になりますが、我々は有機金属化学気相エピタキシー(MOVPE)法という、ガスを高温で反応させる方法と、アンモニアソース分子線エピタキシー(NH3?MBE)法という、真空中で分子線として原料を供給する方法を用い、単結晶の上に単結晶薄膜をエピタキシャル成長させる研究を中心に進めています。また、独自開発した、世界で唯一のヘリコン波励起プラマスパッタエピタキシー(HWPSE)法を使用しています。いずれも、原子層レベルで平坦な表面や界面を持つ半導体の超薄膜や、ナノ構造のエピタキシャル成長が行えます」。出す方法によって、高効率超短パルス電子線を得ています。それをナノメートル台の微小領域に集束してSTRCL装置として使用しています」。「CLスペクトルを、フェムト秒~ピコ秒の時間領域で超高速時間分解することにより、深紫外線波長においても、発光スペクトルが時々刻々と変化する様子を観測することが可能となります。これにより、ワイドギャップ半導体量子井戸・ナノ構造において、転位等の構造欠陥が非輻射再結合寿命に与える影響や、ナノ構造サイズが輻射寿命に与える影響を把握することが可能になりました」。TERM INFORMATION深紫外線(DUVlight)新たな可能性を秘めた深紫外線(ディープウルトラバイオレット)光源の研究へ大型で低効率という課題を半導体素子で解決し、深紫外線光源の実用化へ秩父研究室の研究対象は、品質の高い照明を実現する可視光LEDの追求から、波長200nm台の深紫外線光源およびその材料研究に展開しています。例えば、窒化ガリウム(GaN)は、InNやAlN、BNと混晶化させることにより、バンドギャップエネルギーを0.65~6.04eVまで変化させることができます。このため、光通信波長(近赤外線)、可視光、紫外線を全キャリアダイナミックスの測定のためにフェムト秒パルス集束電子線を開発DUV光を発する、バンドギャップの広い新しい半導体素子を開発するには、微細領域における励起子の発光ダイナミックス計測(刻々と変化する状態の動的観測)を、深紫外線波長で行わなければなりません。秩父研究室では半導体・蛍光体ナノ構造や量子構造においてナノメートル領域で起きる発光過程の動的観測を行うために、サブマイクロメートル台の空間分解能とピコ秒台の時間分解能を兼ね備えたスペクトロスコピーが必要になると考え、フェムト秒パルス集束電子線励起時間・空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)計測装置の研究・開発を1997年から考えて行ってきました。STRCL装置では、フェムト秒~ピコ秒パルス集束電子線と分光器、ストリークカメラを組み合わせています。禁制帯幅が広い半導体の短パルスキャリア励起にはピコ秒台以下のパルス電子線が必要となりますが、その発生は非常に困難です。「我々は、フェムト秒パルスレーザーにより真空中の金属を励起してパルス光電子を取り「世界にまだないもの」を求める秩父研究室のスピリッツ「最先端の研究分野で差別化を図ろうとすれば、世界にひとつだけのアイデアや世界に一台しかない装置が必要となります。どこにでもある装置では差別化ができません。従って、肝心な部分は自分たちで設計し、自分たちで手作りしています」と熱く語る秩父教授。数々の実績と、「世界にまだないもの」を求める秩父研究室の理念に、今多くの企業が注目。高度評価技術による物理的解釈・知見の提供や、新たな装置開発を秩父研究室に依頼するという形で、産学連携が進められています。「常に時代の先端を生き、社会に貢献できる成果を出していきたいという考えのもと、日々新たな研究を行っています。マテリアルエンジニアリングで量子・光エレクトロニクスを操り、新しいデバイス領域を開拓したいですね」。定義では、波長300nm以下で遠紫外線(FUV)手前の200nm程度までの紫外線のこと。200?280nmはUV?Cとクラス分けされている。量子ナノ構造発光素子・受光素子発光したり受光したりする部分(活性層・発光層、吸収層と呼ぶ)を、人為的に非常に薄く、または点のように小さくして量子サイズ効果が現れるようにした高性能光デバイスのこと。例えばInGaN青色LEDの発光層は、厚さ2ー3nm(DNAの直径程度)ほどの平面状の超薄膜であり、量子井戸という。コヒーレント光時間的コヒーレンスと空間的コヒーレンスを併せ持つ光のこと。前者は、光波の正弦波性が非常に高く周波数と位相が揃っているという意味で、波長の広がりが殆どない単色光であることを意味する。後者は、その光が空間を伝搬する際に、極めて平面波や球面波に近いことを表す。いずれも、光が干渉することを意味し(可干渉性)、散乱させるとギラギラ(ザラザラ)と光が見える。これをスペックルという。本編では、レーザー光のことをさす。スペクトロスコピー直訳すると分光学。物質に入射した電磁波(光)が、吸収・反射・透過・散乱されたり波長変換されたりする相互作用の様子を、波長(光子エネルギー)の関数として計測して理解する手法一般のこと。物質が光以外の励起方法によって発光を呈する場合も、電子系(励起子)と光子系(電磁場)の相互作用であり、例えば電子線励起発光スペクトル計測の場合は「カソードルミネッセンススぺクトロスコピー」と言うべきである。通常は省略されてカソードルミネッセンスと呼ばれる。バンドギャップの広い半導体における局所的な発光の動的観察を可能にする、フェムト秒集束パルス電子線を用いた日本に唯一の時間・空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)計測の概念図と計測装置。自分流の料理を作って、研究室のメンバーにふるまったりしますOFF TIME超臨界アモノサーマル法アモノサーマル法は、人工水晶の製造に用いている「水熱合成法」で用いる超臨界水を超臨界アンモニアで置き換えた、量産に向くバルク結晶成長法である。この方法は、通常の温度・圧力では溶解しない溶質を、高温・高圧の超臨界流体に溶解し、物質を輸送して結晶を再結晶させる方法である。秩父研ではGaN結晶を対象としており、GaNのアンモニアへの溶解度を高めるためハロゲン化アンモニウム(NH4X;X=Cl、Br、I)を酸性鉱化剤として用い、超臨界圧アンモニア環境に耐えるオートクレーブで結晶育成を行っている。具体的には約150MPa程度、温度600℃以下で、写真のような高品質GaN結晶の高速成長に成功しています。研究室イベントの時だけですが、若手スタッフや秘書さん学生の普段の労をねぎらうべく(?)料理を作ったりしています。若い人が多いので、チキンドライカレーやシーフードリゾット、さんまうどんなどのキッチュな料理を出します。また、牛サイコロステーキや豚の丸焼きもやります。デザートには「濃厚ふわとろフレンチトースト」を出して、嘘だか本当だか、喜んでもらいました。気合が入ると、プチコース料理もトライします。バーニャカウダはもちろんガーリックを熱して柔らかくしてアンチョビとつぶすところからやります。仙台牛の特製ステーキもオリーブオイルとガーリックと塩でこだわって作ります。リケダン(理系の男性)は料理ができると思っています。なぜなら「実験よりも簡単だから」。しくじってもリカバリーができるので、中和滴定よりも簡単です。量子光エレクトロニクス研究分野(秩父研究室)には、小島一信准教授(後列右端)、山崎芳樹助教(後列中央)をはじめ、多数の産学連携研究員、技術者、学生、秘書等、多くのスタッフが参画しており、社会に貢献する化合物半導体光エレクトロニクス素子・材料の研究を推進しています。誌面スペースの都合上触れませんでしたが、三菱化学(株)、(株)日本製鋼所との3機関共同研究にて、「超臨界アモノサーマル法による高品質バルクGaN結晶育成」の研究開発を行っています。この結晶には貫通転位が殆ど無い領域があり、高性能LEDや半導体レーザー、パワー電子デバイス用の基板として国内外から大きな期待を集めています。9 TAGEN FOREFRONTTAGEN FOREFRONT10