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概要

TAGEN FOREFRONT 04

ケミカルライブラリーを系統的な合成経路で効率的に同時合成するための実験手法です。「コンビナトリアル化学の考え方をベースに、数十の試料を一度に合成できる『溶液並列合成法』を開発しました。これにより蛍光体の探索に要する時間を大幅に短縮する技術を確立しました」。目的試料の化学組成と一致するように原料溶液を混合し、一連の溶液並列合成・ゲル体合成・熱処理を経て多数の蛍光体を一度に合成します。ハンディランプで光を照射して発光を目視観測し、候補物質を絞り込みます。「例えば、その種類が1万9千を越えるケイ酸塩鉱物を対象に、私たちは、溶液並列合成法を適用することにより、新しい蛍光体を次から次へと発見することに成功し、国内外で大きな注目を集めています」。結晶サイト工学による蛍光体の発光色の制御さらに新材料を発見する手法として、現在研究室が取り組んでいるものに「結晶サイト工学」というものがあります。Ca1.2Eu0.8SiO4という蛍光体の賦活剤であるユーロピウムイオン(Eu2+)がカルシウム1とマークした位置を占有すると黄色の光が発光し、一方、ユーロピウムイオンがカルシウム2とマークした位置を占有すると深赤色が発光します。「蛍光体が何色で光るかは、発光の源であるイオン(賦活剤)の種類と賦活剤の位置で決まります。賦活剤が占有する位置を制御することで性能を制御することを『サイト工学』と呼びます」。Ca1.2Eu0.8SiO4という蛍光体を例にとると、この蛍光体の賦活剤であるユーロピウムイオン(Eu2+)が、結晶の中の2種類の異なるカルシウムのサイトを占有することで2色の発光をすることが分かりました。同じカルシウムであっても、その環境(いくつの酸素と結合しているかなど)が全く異なりますので、賦活剤のユーロピウムイオンが受ける影響が変化し、発光色が変わるのです。従来は、カルシウムの1だけしか注目していませんでした。このカルシウム2に注目することで、今までだれも見い出せなかった機能を生み出すことができます。白色LED用の赤色蛍光体として使うことができるので重要なのです。このような発光現象は、酸化物では事実上初めての例で、驚くべきことです。「新しい物質を作る上で自然がいろいろ教えてくれます。鉱物をお手本にして新しい物質を探す。これがこれからの化学のあり方かも知れません」。TERM INFORMATIONグリコール修飾シラン:GMS(Glycol-ModifiedSilane)シリコンにグリコールが結合した化学種。従来までの溶液シリコン源とは異なり、中性の水に一様に分散させることが可能。GMSの利用により、シリコン含有材料の合成法の選択肢が広がった。コンビナトリアル化学コンビナトリアル=集積化を活用した化学。多種類の合成や反応を一度に実施し、その中から目的物質、反応を効率よく探索することができる。溶液並列合成法コンビナトリアル化学を応用した材料探索法。類似化合物群をライブラリーとして構築後、その構成元素の混合溶液を原料として準備し、同条件でライブラリーの化合物を一度に合成する。本手法により組成が精密に制御された物質が、一度に大量に合成できる。賦活剤ある物質に対して機能を付与するイオン。蛍光体においては賦活剤が発光中心となり、発光を担う。通常、賦活剤の量は、母体に対して数%程度の少量でよく、少量の賦活剤をいかに均一に対象物質に分散させるかが蛍光体の高輝度化において重要である。サイトを占有結晶性の材料では、構成元素は空間の決まった場所に存在し、その場所をサイト、そのサイトに元素が存在することを占有、という。賦活型の蛍光体の高輝度化や発光色制御において、賦活剤がどのサイトを占有するのかを理解し制御することが重要である。垣花研究室は無機材料の機能の飛躍的向上及び新無機物質の探索を可能にする材料化学の確立を目指しています。世の中を豊かにすると同時に産業界で活躍できる有為な人材の育成に注力しています。TAGEN FOREFRONT 46