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概要

TAGEN FOREFRONT 04

中央で輝いているのが、電磁浮遊法によって高温で融けた状態で宙に浮いている金属。これは先代のシステムによる浮遊状態で、電磁コイルが巻かれたガラス管の中に高温液滴が浮いているため非常にわかりやすい見え方になっています。産業(原子炉・核融合炉用材料、発電用タービン材料開発)、航空宇宙産業(ロケット・航空機用エンジン及び構成部材開発)など、さまざまな産業分野での応用が期待されています。たとえば近年注目されている火力発電所の熱効率向上とTERM INFORMATION高温融体結晶成長、鋳造、溶接分野など多くの材料プロセスでは、一旦溶融した状態を経る過程を含んでいます。得られた結晶や鋳造あるいは溶接部の品質には溶融状態における伝熱や物質移動が大きく影響しますので、高温融体を対象にした学問分野が重要です。熱物性密度、熱容量(比熱)、放射率、熱伝導率、表面張力、粘度、拡散係数など主に熱や物質移動に関する物性を総称して熱物性と言います。石に着目し、電磁浮遊法による測定の研究へと方向変換。赴任先の東北大学には、超伝導磁石を使える環境も整っていました。学内外の研究者と連携し、科学技術振興機構(JST)の研究開発事業に応募申請し、3年目にしてようやく採択を得て本格的な研究をスタートさせました。画期的な開発を実現した測定法は、超伝導磁石による電磁浮遊法により試料融体を浮遊させ、静磁場を組み合わせて融体の振動と内部の対流を抑制することによって、融体の熱容量、真の熱伝導率および放射率を測定可能にしたものです。研究の成果は論文発表し、英国物理学会最優秀論文賞を受賞しました。さまざまな産業分野での具体的な応用への展開本装置の開発により、半導体・素材産業(結晶成長、鋳造、凝固、溶接などのプロセス開発)を基本として、エネルギーいう課題があります。「数パーセント熱効率が上がれば、たいへんな効率化になるわけですが、その熱効率を上げるには作動温度を高くしてやればいい。問題はその高温に耐える材料をつくる必要がある。高温融体の熱物性測定装置は、そういう材料開発に十分に応えることができる」と、すでに具体論の展開も進められています。測定装置は、他の研究機関、あるいは金属鉄鋼メーカーなど企業の物性調査など、多方面からの依頼測定にも提供されています。福山教授は「この装置は、何か別のアプリケーションとの組み合わせも考えられる。もちろん材料の作製の方にも応用できる。アイデアを持っている人にはいつでも提供できるよう開放している」と話しています。こうした幅広い分野への展開を通して、未開拓だった高温融体の物性物理に新しい可能性を拓くものと、大きく期待されています。超伝導磁石コイル材としてNb3Snなどのような超伝導材料を用いた電磁石で大きな磁場を発生することができます。医療用の磁気共鳴画像診断(MRI)装置などが応用例です。私たちは、浮遊した金属液滴の振動や対流の抑制に用いて新しい応用分野を開拓しました。静磁場直流磁場とも言い、交流磁場と異なり時間変動がない磁場のこと。超伝導磁石から発生した静磁場中に金属液滴に浮遊させると、ローレンツ力により液滴の振動や内部の対流を抑制できます。熱伝導率熱流束は温度勾配に比例するというフーリエの熱伝導の法則を記述する物性値です。高温融体の熱伝導率は、内部に対流が存在するため、測定が困難な熱物性でしたが、私たちの研究成果により、高温融体の熱伝導率を高精度に測定できるようになりました。熱効率高温熱源から熱を取り出し、仕事に変換する効率のこと。熱力学的には、熱を仕事に100%変換することは不可能です。熱効率を高めるためには、タービンなど熱機関の作動温度を高温化すればよく、そのためには、高温に耐える材料の開発が必要です。超高温熱物性計測システムの断面概念図/装置中央部のドラム中心部に試料の浮遊物質が位置します。ドラムの周囲には超伝導磁石。上部から周期加熱用レーザーを照射し、浮遊液滴下部から放射温度計にて温度応答を測定し、比熱、熱伝導率、放射率を測定します。TAGEN FOREFRONT 28