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概要

TAGEN FOREFRONT 04

完成した軟X線顕微鏡/超精密装置のような外観、左ページ上の模式図を参照すると装置の構造が把握できます。TERM INFORMATIONシュヴァルツシルト反射鏡凹面鏡と凸面鏡を同心になるように配置した反射鏡系で、半径を適当に選ぶことで収差を減らすことができる。両者とも球面なので、高精度な鏡面作製が容易である。軟X線の結像に用いるには表面を多層膜コーティングする。「この時、分解能が高くても実際にはCCD検出器のピクセルサイズで制限されていますので、この課題を克服するためには対物鏡の拡大率をさらに高くする必要があります」と栁原教授。研究室では、反射鏡の後段にさらに1枚の拡大鏡を加えて全体の拡大率を1500倍にした超高倍率軟X線顕微鏡も実現させました。この技術を用いて、次世代リソグラフィー技術として期待されている極端紫外(EUV)リソグラフィー用マスクの実波長観察で、回折限界に迫る30nmの高分解能を実証しました。「生きた生物試料の高分解能観察を可能にする軟X線顕微鏡は、今後たとえば脳の神経回路の解明を目指すコネクトームのマッピングデータの収集などに貢献できる」ものと期待されています。コヒーレント軟X線による新たな光工学に期待光源技術の進歩は著しく、軟X線領域においても、放射光技術を基盤にしたX線自由電子レーザーや高強度レーザーを用いた高次高調波光源などのコヒーレント軟X線光源が実用化されつつあります。「これらの軟X線についても、自在に扱うためには多層膜反射鏡の開発が欠かせません」と栁原教授は強調します。「こうした開発によって、コヒーレント光を自在に変調・制御し、高い機能性を持つ軟X線光波場をつくり出すことができます」と栁原教授はこれからの展望について話します。今後、「高輝度レーザーを多層膜ミラーで直径10nm程度に集光できれば、高分解能走査型分光顕微鏡が実現可能になる。あるいは高次高調波などの超短パルスレーザーをナノ集光すれば、超高強度場が得られ、軟X線領域でも2光子吸収など、物質の非線形応答の励起が可能になる。また可視光レーザーを用いて研究されている光渦の生成も、多層膜反射鏡を利用して軟X線領域でも可能になる」など、新たな光工学の進展への取り組みに大きな期待が寄せられています。スパッタ法アルゴンイオンを負電圧によってターゲットに衝突させ、その衝撃でターゲット成分をたたき出し、基板上にターゲット成分の薄膜を形成する技術。基板への付着力が強く、高融点の物質でも成膜が可能という特徴を持つ。リソグラフィー原版に描かれた半導体デバイスの回路パターンを露光装置によってシリコン基板上に縮小転写する技術。これまでの光による微細化は限界を迎えており、短波長の光を使うEUVリソグラフィーが次世代の技術として注目されている。コネクトーム脳の神経細胞の詳細な接続状態を表す神経回路図を3D化したもの。これができれば、脳の活動を理解したり、脳の治療に役立つと期待されている。これを作成するには広い視野を高分解能で観察する必要がある。X線自由電子レーザー通常のレーザーのようにコヒーレントな性質をもった文字通りのX線のレーザー。ミラー共振器を使う通常のレーザーとは異なり、光速まで加速した電子から発生する放射光X線と電子自身との相互作用によって発生させる。詳しくは、以下を参照。htp: / /www2.scphys.kyoto-u.ac.jp/Labos/fukisoku/fel.htmlコヒーレント光光束を2つに分割して再び重ね合わせたとき、位相が揃っていれば干渉するのでコヒーレント(可干渉)であると言い、その光をコヒーレント光と言う。レーザー光はコヒーレント光であるが、自然光は位相がランダムなのでコヒーレントではない。EUVリソグラフィー用マスクの波長13.5nmにおける観察像/左はエルボーパターンの中間像。点線の円(マスク上の直径160μm)は有効視野。右は最終像面で観察された幅240nmのエルボーパターン。TAGEN FOREFRONT 16