ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
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TAGEN FOREFRONT 03
TERM INFORMATION授賞説明文ノーベル賞が発表されると同時に、スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sicience)による授賞内容と授賞背景を記述した文章がホームページで公開される。文章は解説論文と同じように文献を引用しながら記述される。結晶と非晶質原子が規則的に配置した構造単位あるいはモチーフが、空間で繰り返し(周期的に)配列した物質である。特定な構造単位が存在しない原子配列をした物質は非晶質である。並進対称性左ページ図の左辺のように、結晶は正3角形あるいは正方形のような構造単位の繰り返しによって結晶が作られている。この構造単位だけの大きさだけを動かした時、動かす前と区別がつかない状態が再現される。この状態が再現できる構造単位がもつ対称性を並進対称性と言う。準周期準結晶の発見によって作られた言葉である。原子が非周期的に配列するにも関わらず、その回折パターンには回折ピークが現れる。また、その回折ピークの配列も非周期的である。フィボナッチ数列は一次元準周期構造の最も良い例である。ペンローズパターンイギリスの数学者・物理学者ロジャー・ペンローズ教授が考案した非周期の平面充填(周期的でない配列で平面を埋め尽くす方法)。P.8右上の図に示すように2次元版は2種類の菱形の組み合わせで準周期配列が実現される。その中に5角形構造と準周期性が潜んでいる。5角形構造左ページ図右辺に示すように正5角形のような構造単位は並進対称性を満たせないので、結晶学では正5角形構造を構造単位とした結晶が存在し得ないとされていた。しかし、準結晶の回折パターンには正5角形配置の回折ピークが現れている。が研究対象として非常に難しいものです。ただ電子線による回折パターンなどは、そこにきれいな秩序を見いだすことができます。回折パターン上に現れた5角形の連なりは、実は黄金比でできていることもわかりました。そういう埋もれていた秩序との出会いが、準結晶研究のひとつの魅力です」。多彩な魅力を持つ準結晶に着実に近づくための研究 準結晶は、結晶ともアモルファスとも異なる新しい構造物質であり、準周期に由来する興味深い性質を有しています。その主な特徴は、「まず電気抵抗が大きい。一般的な金属の数100倍も高く、しかも金属とは逆に低温ほど高くなります。それから硬度が高い。外から力を受けても、きわめて変形しにくく、アルミ合金系の準結晶はジュラルミンなどよりはるかに硬い物質です。また熱伝導率がセラミックス並に低いこと。摩擦係数はテフロン並に小さいです」。 こうした特徴は、実際にさまざまなタイプの準結晶が実際に作製され、その構造解析をして検証することによってわかってきたことです。 こうした性質を活かして、何らかの実用化ができるのではないかという試みはいくつか出てきていますが、蔡教授は「準結晶はまだまだ未知の要素が多く、これからも基礎研究の継続が大切です。とにかく、多彩な魅力をもっている準結晶には興味がつきません。一歩一歩着実に研究を進めることだけ考えています」。左/準結晶の電子線回折パターンには、図のように5角形構造が現れます。原子の配列は等間隔ではないが、5角形がある規則性をもって並んでいます。右/準結晶の回折パターンの再現(ペンローズパターン)。黄色いひし形と緑のひし形の2種類を組み合わせた特殊な5角形パターンでは、平面を隙間なく無限に埋め尽くすことができます。熱力学的に安定な準結晶合金と考えられているものは、μmからcmのスケールの大きさを持つ単準結晶粒を形成することが多いと知られています。写真は、蔡研究室で撮影された単準結晶で、すべて正12面体の外形を示しています。TAGEN FOREFRONT 8