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概要

TAGEN FOREFRONT 03

自らの研究姿勢を貫いて準結晶領域に新しい価値を創造MY FAVORITEミステリーの読書、旅、食材を探し求めること、居酒屋。大好きなひととき 小説、特にミステリーを乱読するのが好きです。「フロスト警部シリーズ」などの海外ミステリーや日本のもので誉田哲也や道尾秀介の作品を読んでいます。研究の気分転換になります。 学会や研究でよく海外へ出かけますが、オフに時間があれば、市場巡り、ご当地の食材を見るのが好きで、最近東ヨーロッパが良かったです。料理は自分でするわけではありませんが、市場に行って食材を探したり、蔵王方面へ野菜の買い出しに行ったりすることが好きです。最近閉店した一番町にあった居酒屋には学生の頃からよく行っていました。安定な準結晶の発見で初めて確立された新物質構造 シェヒトマン博士の新物質の発見が公表されてから2年後、科学界にひとつのニュースが流れました。高温超伝導の発見です。準結晶発見の場合と違って、高温超伝導はすぐ翌年、2人の発見者がノーベル物理学賞を受賞するという華やかなスタートをきりました。これをきっかけに高温超伝導ブームが世界へと広がります。ところが、こうしたブームにとびつくこともなく、まだ確立されてもいなかったシェヒトマン博士の発見に関心を持ち、自らの研究の一歩を踏み出した研究者がいました。当時の東北大学大学院生、現・多元研蔡安邦教授です。 1987年、アルミニウム・銅・鉄というありふれた元素から成る合金で、見事に安定して高品質な準結晶を発見し、「応用物理学会欧文誌」に論文を投稿。ほんとうに存在するのか、おおかたのところ疑問視されていた準結晶の存在が、このとき初めて明快な誰もが納得するかたちで証明されたことになります。この論文が2011年ノーベル化学賞授賞説明文に引用されたものです。 「準結晶が発見された後、高温超伝導が発見され、日本でも多くの研究者が関心を持ち始めた時期でした。ただ私は金属が専門でしたので、新しい可能性がありそうな準結晶を探ってみたいと思っていました。気がつくと準結晶ひと筋に研究しているのは自分ぐらいという状況でした」と蔡教授は振り返ります。周期性はないが一定の秩序をもつ原子配列 あらためて結晶と非晶質について整理してみましょう。結晶とは原子や分子がきれいに並んでいる物質のことです。結晶の並びはどこまで行っても同じように並んでいて(並進対称性)、等間隔で周期性があります。これに対し非晶質は、配列がバラバラで無秩序です。それ以外の物質構造はあり得ない、というのが当時の固体物理学の常識でした。 そのどちらでもない第3の状態と言える構造が、準結晶です。原子の配列は等間隔ではなく、並進対称性と周期性はありませんが、一定の秩序つまり規則性(準周期)はあるということになります。準結晶の回折パターンでは、5角形構造が認められています。 「準結晶の発見とは、物質の秩序とは何か、ということを問いかけられたことだと私は考えています。準結晶は、構造自体01FOREFRONT REVIEW並進対称性/結晶は、原子や分子が規則正しく並んだ状態。原子が構造単位となる正3角形や正方形の基本形を構成していて、どこまでも敷き詰められ、赤線のようにパターンを平行にずらしてもまったく同じ形になります(並進対称性)。しかし、5角形では図形を平行移動しても同じ形にならず、平面に敷き詰めようとしても赤い部分の隙間が生じます。TAGEN FOREFRONT 7