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概要

TAGEN FOREFRONT 03

1958年台湾生まれ。1990年東北大学工学研究科材料物性専攻博士課程修了。1990年東北大学金属材料研究所助手、1993年同助教授、1996年科学技術庁金属材料研究所主任研究官、1999年(独)物質材料研究機構非周期研究グループディレクター。2004年より現職。1990年日本金属学会論文賞、1994年日本IBM科学賞、1999年日本金属学会功績賞など受賞。http://www.tagen.tohoku.ac.jp/modules/laboratory/index.php?laboid=26http://www.tagen.tohoku.ac.jp/center/CENIM/field_mdmf.html東北大学多元物質科学研究所新機能無機物質探索研究センター金属機能設計研究分野 教授TSAI, An-Pang蔡安邦明快な存在証明を世界に示し準結晶を新次元に導いた研究成果 物質とは、構造として、原子が等間隔で周期的に規則正しく並んでいる「結晶」と、原子の配列に秩序がない「非晶質(アモルファス)」の2分類しかない。これがかつての科学の定説でした。1982年、アメリカで研究を行っていたイスラエルの科学者ダン・シェヒトマン博士は、この常識を覆す発見をし、84年に発表しました。アルミニウムとマンガンの合金で、原子が秩序を持って並んではいるものの周期性がない、つまり「結晶」とも「非晶質」とも構造が異なる「第3の固体状態」。これが後に「準結晶」と名付けられた物質です。 しかし、発見当時作製された物質は不安定で質がわるく、そのため結晶の欠陥に由来するもので本質的な構造ではない、結晶のでき損ないだろうとの反対意見が大勢を占め、評価が定まりませんでした。こうした状況に突破口を開けたのが、実は当時大学院生だった蔡安邦教授の研究成果でした。1987年、アルミニウム・銅・鉄の合金による高品質な準結晶を発見したことをはじめ、安定な準結晶を系統的に数多く作製し、92年には国際結晶学連合が準結晶の存在を認め、結晶の定義を変更するに至りました。蔡教授の功績によって、準結晶がようやく本物だと認められたと言っても過言ではありません。 それを物語るように、最初の発見から29年経った2011年、シェヒトマン博士へのノーベル化学賞授賞理由の説明文には、蔡教授の発表論文が多数引用されています。01FOREFRONT REVIEWTAGEN FOREFRONT 6