ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
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TAGEN FOREFRONT 03
国内外の中性子散乱施設と連携・共同して、進化した研究へOFF TIME研究室の流儀は、よくしゃべり、よくコミュニケーションし、よく発散すること。 このギターは学生の誰かが置いていったんだと思いますが、研究室のみんなはギターや音楽が好きですね。私はハードロック派なのでいちばん下品なんですが、あとは皆さん、クラシックだったり、フォークだったり。助教の南部先生は学生の頃、指揮をしたこともあるそうです。 みんなで飲み会はよくします。芋煮会や、サンマのバーベキューをしたり、けっこうみんなでワイワイと楽しくやります。猛烈に忙しかったりすると、その後は異常に飲んだり。研究室でも、海外出張でも、よく実験の結果待ちで時間が空いたりしますが、そういう時はいっしょにごはんに行ったり楽しく過ごしてます。J-PARCの建設中の段階では、佐藤教授は装置担当者の1人として尽力していました。現在はこの設備は当然のことながら遮蔽体に覆われているため見ることはできません。貴重な写真です。量子スピン系を基本に未知の状態の観測・発見を目指す 佐藤卓教授がいま最も力をいれていることは、次の3点です。 第1、量子スピン系/2008年(東大物性研当時)に佐藤グループが発見したカゴメ格子上のVBS(共有結合固体)について、自身ではまだ不完全ととらえています。「この時はカゴメ格子上にきれいな形はできたものの、隙間が存在していた。これがほんとうに巨視的固体レベルに広がった状態、つまりレゾネーティング(共鳴)した状態を見つけてみたい」。理論的に予言はされていますが、まだ誰も見ていない状態。その発見を、今も佐藤教授は目指しています。 第2、鉄系超伝導/2008年に東京工業大学のグループが発見した鉄系超伝導体は、銅酸化物高温超伝導体に次ぐ高い超伝導転移温度を示す物質群として、世界中で精力的に研究が進められています。しかし、未だその超伝導の起源、即ちクーパーペアを作る力は明らかになっていません。佐藤教授はこのペアリングがなぜ起きてくるのかを解明したいと考えています。「中性子で解明できるかどうかわからないが、できるだけ取り組んでみたいと思っています」。 第3、渦巻き構造の磁性体/ある種の磁性体で、電子スピンが渦状に並んだ磁気構造体があります。その粒子の運動を探そうとしています。「新しい分野で、まだ未知数ですが、これからやってみたいことのひとつです」。研究用原子炉と加速器国内外の中性子施設を活用 こうしたさまざまな対象の観測と解析に、佐藤教授は中性子散乱法を使いますが、中性子散乱の特徴としては、数多くのメリットはありますが、中性子線の実験には研究用原子炉やパルス中性子源という巨大設備を必要とするという条件があります。 日本においては、この中性子利用施設は現在2カ所に限られます。1つは日本原子力研究開発機構(JAEA/茨城県東海村)の研究用原子炉「JRR-3」。1962年に初の国産研究炉として建設され、1990年までに大規模な改造を行い、現在では基礎研究から産業利用に至る06FOREFRONT REVIEW2008年に発見したカゴメ格子上のVBSは、スピンが図のピンクの風車状の形に配列されたものです。つまり、このピンク1つの形とその隣の形との間にギャップがありました。これが巨視的固体レベルまで広がった状態の観測を目指しています。TAGEN FOREFRONT 39