ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
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TAGEN FOREFRONT 03
TERM INFORMATION電子スピン電子の持つ内部自由度であり電子自身が持つ角運動量。量子数としては±1/2を取るため、上向き(↑)、下向き(↓)の2状態と呼ばれることもある。スピン角運動量は電子に磁気モーメントを与える。このことが電子が磁石の性質を持つ起源となっている。スピンのゆらぎ電子の持つスピン自由度は、(スピン自由度間の相互作用に比較して)高温では熱エネルギーによりかく乱され、時間的に定まった方向を持たない。この揺らぎのことを熱揺らぎと呼ぶ。一方、スピンが量子力学的な自由度であることを反映して、その x, y, z 成分は同時に対角化できない。したがって、スピンの絶対零度でも(例えばz成分を確定すると)x, y 成分は不確定となる。これが量子揺らぎである。籠目格子日本の籠の目と同型であることから、世界的に籠目格子(Kagome lattice)と呼ばれている。格子点が3角形を構成することから、その上にスピンが配置された場合、強い幾何学的フラストレーションが考えられる。さらに3角形が頂点を共有して結合しているため、無限系においても強いフラストレーションが想定される。このような理由で新奇な量子物性が期待される舞台と目されている。巨視的量子現象一般には、量子力学は原子サイズ等の極微小な物体を記述し、目に見えるような大きな(巨視的な)物体は古典力学等で記述されると考えられている。しかし、ある種の物質では量子力学的な振る舞いが巨視的に現れることがある。これを巨視的量子現象と呼ぶ。超伝導や超流動はその典型的な例である。超伝導低温において電気が物質中を抵抗なしに流れる現象。1911年当時ひたすら極低温を目指していたカマリングオネスが、自ら開発した低温装置により水銀を4.2K(摂氏?269度)以下に冷やしたところ、電気抵抗が消失することを発見した。現在では種々の金属間化合物、酸化物等で観測されており、電子のペアリング(クーパーペアリング)とそのボーズ凝縮として理解されている。中性子散乱法原子核中の中性子を取り出し物質に照射、そこからの散乱中性子を解析することで物質の内部を探る手法。中性子は物質中の原子核と核力を通じて相互作用するため、物質中の原子核の位置や運動を調べることができる。この散乱過程においては軽元素等にも高い感度を持つことが特徴である。さらに中性子のスピンは物質中の電子と磁気双極子相互作用するため、物質中の磁気モーメント(電子スピン)の向きや運動をも調べることができる。スピンダイナミクスを観測する中性子非弾性散乱法 固体物性研究は、対象をいかに観測し、解析するかということが重要なキーになります。佐藤研究室では、量子スピンに対して「中性子非弾性散乱法」という手法を使って、スピンダイナミクスを直接観測することにより、ゆらぎに支配された量子的状態の形成原因や、そこから現れる特異な物性を解明していこうという試みを続けています。 対象の物質に中性子を衝突させると、中性子は物質の影響を受けてさまざまな方向に散乱していきます。これを中性子散乱と言いますが、衝突した時に、物質との間でエネルギーのやりとりが生じるものを非弾性散乱と呼んでいます。散乱した中性子のエネルギー変化を解析すると、その影響を与えた物質中の原子や磁気モーメントの運動を知ることができます。 物質科学で用いられる散乱法には、光・X線のような電磁波、電子、イオン、中性子などいくつか方法がありますが、中性子散乱法を使う利点を、佐藤教授は2つ指摘しています。 「1つ、中性子は物質中の原子核に散乱され、たとえば水素・リチウムなどの軽元素に対しても作用するので、これらを簡単に検出できます。2つめは、磁気散乱による検出が他の手法より強く行うことができる。たとえば核スピン共鳴法では核の位置の情報のみが得られますが、中性子散乱は波として広がった中性子が行うので得られる情報が圧倒的に多いと言えます」。研究室内にある設備は、主にスピン量子物性を研究する特殊な化合物など試料の作成にかかわるものです。試料の界面を切断するダイヤモンドワイヤーソーや、試料育成や熱処理時にガラス管封入するバキュームシーリングなどの設備を扱って、試料の加工・管理を行います。絶対零度での量子ゆらぎ/水の3態は、よく知られているように、蒸気(ガス)が冷やされれば液体となり、さらに冷やされれば固体となります。物質の電子スピンは、高温の時にはスピンの向きが定まらずふらふらしているガス状態。温度が下がって絶対零度になるとほとんどの物質では、左端の図のようにスピンの向きが整列され静止状態になります。しかし特定の物質では、逆向きのスピンが対をなしてゆらぎ続けます。これが量子ゆらぎです。TAGEN FOREFRONT 38