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概要

TAGEN FOREFRONT 03

電子スピンの観測にベストな手法中性子散乱を用いた研究MY FAVORITE2つの趣味の共通点は、からだを思いっきり動かすこと、かな? 自分では多趣味と思っていますが、2大趣味を紹介します。1つは、東京にいた時のことですが、ハードロックのバンド活動をしていてギターを演奏してました。ライブもやってましたね。今はさすがにちょっとバンドはやれてません。 もう1つ、好きなのは走ることです。仕事が忙しく毎日は練習できませんが、暇を見つけては走っています。写真は仙台に移ってから、山形県寒河江市で開催された「さくらんぼマラソン」で走った時のもの。全部で1,000人も参加する人気のある大会のようですが、下から数えるよりは上から数えた方が早い位の順位でした。練習もせずに走った割には、けっこうイケテル成績? これからも、いろんなところで走ってみようと思ってます。佐藤研究室での研究の基本は、スピン量子物性の探求。ある物質では低温下において電子スピンが静止せず、ゆらぎを伴います。そうしたスピンの特異な動きを観測するため、さまざまな金属間化合物、有機物、イオン結晶などの試料を用います。見えなくなった電子スピンを探す、魅力的な研究 量子力学の分野でよく耳にする名前に「電子スピン」というものがあります。「電子の持つスピンは、とても魅力的な研究対象」と佐藤卓教授は話します。電子は、磁界内である力を発生することがわかっていますが、これを「電子スピン」と呼んでいます。電子には「スピン」という内部状態があり、上向きと下向きの2種類のスピンがあるというのが、基礎知識です。この電子スピンは温度が高い時には、上を向いたり下を向いたりふらふらしています。物質の3態におけるガスの状態のイメージです。これを「スピンのゆらぎ」と言います。それでは温度をどんどん下げていくとどうなるでしょう。普通の磁性体では、すべてスピンの向きが揃ってしまいます。 「ところが、ある物質では温度をいくら下げていっても、絶対零度でもふらふらしたがるスピンがあります。ふらふらと動いているので観測上はスピンがあたかも消えたように見えます。その消えたスピンを見つけ出そう、というのが私たちのテーマです」。ミクロの世界から目に見える巨視的量子現象へ 「スピンを籠目格子の格子点上に配置し、隣り合うスピンの間に互いに反対方向を向き合おうとする相互作用が働くとします。すると、1つが3角形の片方と組を作ると、もう片方とは組めない。次にあぶれた方が片方と組むともう片方とは組めない、と言うことが連鎖していきます。つまり、籠目格子上にスピンのペアが揺らぎながらどんどん広がって行くことになります。そうすると量子というミクロの世界のことから、目に見える結晶全体が量子力学に支配されてしまうような現象、いわゆる「巨視的量子現象」が起きてくることになります。 「こういう現象がいちばん派手に現れるのが、超伝導です。特定の金属をある温度まで下げると電気抵抗がまったくなくなって、電気がどこまでも流れます」。超流動と言われるものもそのひとつです。液体ヘリウムの粘性がなくなって容器をよじのぼってあふれ出てくるような現象が起きます。「ある温度より低いところで量子揺らぎが支配するような、新しい目に見える現象を見つけたいというのが、私たちの研究の目的です」。06FOREFRONT REVIEWTAGEN FOREFRONT 37