ブックタイトルTAGEN FOREFRONT 03
- ページ
- 33/52
このページは TAGEN FOREFRONT 03 の電子ブックに掲載されている33ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは TAGEN FOREFRONT 03 の電子ブックに掲載されている33ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
TAGEN FOREFRONT 03
TERM INFORMATIONベースメタル金属の中で基礎資材として大量に使用され資源も豊富なものを指し、鉄鋼、銅、亜鉛、アルミニウム等がベースメタルである。この反対が、最近資源問題等で良く使われているレアメタルである。スラグ溶融酸化物相のことをスラグと呼ぶ。鉱石から金属を抽出する製錬では、目的金属と鉱石に含まれるそれ以外の酸化物成分を分離するためや、目的金属に含まれる不純物を分離するために作られる。溶融硫化物相(マット)鉄鉱石は酸化物なのに対して非鉄金属鉱石には硫化物のものも多くある。このような硫化物から目的金属を製錬する場合には、上記のスラグ(溶融酸化物)ではなくマットと呼ばれる溶融硫化物相を生成し不純物分離を行う。物質移動速度スラグとメタル(溶融金属)のように二つの液相間で化学反応が進む過程を、①バルクから反応界面まで物質が移動してきて、②反応界面で化学反応を起こし、③生成された物質が反応界面からバルクへ移動する、と考えて解析する事が一般的である。鉄鋼精錬では①と③のようにバルクと反応界面間で物質が移動する速度(物質移動速度)が反応速度をコントロールする場合が多くある。混合律速上記において、スラグ相の中の物質移動速度と、メタル相の中の物質移動速度のような2つの過程が同時に反応速度をコントロールする場合を混合律速と言う。メタルエマルジョンある液体に、溶解しない他の液体が多数の微細粒滴になって混合することを懸濁(エマルジョン)と言う。酸化物液体であるスラグに金属液体である溶融メタルが懸濁する事がメタルエマルジョンである。あるリンも還元されるためにフェロマンガンとしての価値が低いものしか得られません。北村研究室では鉄やマンガンは硫化物を形成するがリンは硫化物を形成しないという化学的特性に着目し、非鉄製錬でマットと称される溶融硫化物相を生成させてリンとマンガンを完全に分離するという手法を確立すべく研究を進めています。 次に必要となるステップが、残スラグを水溶液処理してリンを鉄から分離するというプロセスです。水につけるとリンの入っているところだけ抜け落ちてきます。これは、製鋼スラグがリンが濃縮された相とその他のマトリックス相の2相から成り立っていて、両相間の水に対する溶解度が異なるためです。研究室ではこの特性を利用してスラグからリンを分離除去しようとしています。 「リンは肥料として大切な元素です。海外から輸入している状況ですが、アメリカも自国の農産物のために輸出をやめています。今後リンが足りないということが問題になってくると思います。開発した方法で原理的にマンガンもリンもうまく抽出できそうだな、という感覚を持っています」。エマルジョンによって製鋼精錬の効率を上げられるか? 「スラグの研究は、副産物・バイプロダクトの研究ですが、わが研究室では製鋼精錬における反応効率の向上自体の研究も行っています。製鋼精錬工程で反応効率を上げられれば、生産性向上だけでなく環境・エネルギー問題への貢献もできると考えます」。 ポイントは鉄に含まれる不純物をスラグに効率よく移動させてやって鉄を精錬していくということ。一般に精錬反応速度はスラグ、メタル両相内物質移動の混合律速であり、それを増加させる方策は①反応界面積の増加、②物質移動係数の増加、③スラグ/メタル間分配比の向上である。このうち②や③については多くの研究があるが①の反応界面積を増加させることについての知見は少ないと言います。 「反応界面積を増加させる有効な手段に水に油の粒を混ぜたような懸濁液(エマルジョン)をつくるという技術が用いられています。しかし溶鉄に懸濁したスラグは容易に浮上分離され、安定したエマルジョンを形成するのは困難です」。 北村研究室では、逆に、スラグに微細な溶鉄粒を懸濁させたメタルエマルジョンにターゲットを当てています。実験は低融点金属と塩化物で行い、エマルジョンが生成しやすい条件を模索しています。 「企業での勤務経験が長かったのでわかるのですが、大学の研究室での実験を巨大な精錬炉で実現するのはとても難しいという問題もあります。計算モデルを作って製造現場のデータと比較すること等で、基礎実験と実際の精錬反応に結び付けるよう、企業とキャッチボールしながら研究を進めています」。製鋼スラグを水に浸漬させた結果、リンを含む相が選択的に溶解した様子が見られます。高効率の精錬プロセスの設計。そのためには反応界面積を増加させることが必要ですが、その有効な手段として北村研究室ではエマルジョンの形成によりメタル粒子をスラグに懸濁させる技術を研究しています。TAGEN FOREFRONT 32