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概要

TAGEN FOREFRONT 03

TERM INFORMATIONや電極を検査できても、それらを保護するための樹脂である封止材の検査はできませんでした。封止材の検査には、一般に超音波を利用していますが、試料を水に浸す必要があり全数検査には難があります。X線タルボ干渉計を工業用非破壊検査法として応用の可能性を探るため、電子部品の撮影を試みました」。 例えば半導体のチップを撮影したところ、封止材にあるボイドが検出できました。「今、リガクという会社と共同で検査装置を作っているのですが、高速な画像が撮れれば荷物検査装置スキャナやCT装置の開発を予定しています。製品検査やセキュリティのためのX線非破壊検査装置などとして広く役立てられることが可能であると期待されます」。 品質や生産性の向上、製品不具合の対処、安全確保、環境保全などに資する新たな計測技術を生産現場へ提供することを目指しています。新たな計測シーズの創生と共同研究展開 これまで医療診断や非破壊検査など、シンクロトロン放射光を用いない開発の方向性を強調しましたが、この技術はシンクロトロン放射光を用いた高度なイメージング技術の開拓にもたいへん有効です。「X線タルボ干渉計の特長に、広いエネルギーバンド幅の連続X線でも機能することが挙げられます。この特長を活かすと、強力な白色シンクロトロン放射光および高速カメラを組み合わせて、物体の内部を3次元動画として高感度に撮影することができます。これを4D位相トモグラフィと呼んでいます」。 「この手法を使えば物体内部の変化の様子をサブ秒の単位で三次元的に撮影することができます。この4D位相トモグラフィ技術は生体試料の内部組織の運動の様子や材料の力学応答の観察など、様々な応用が期待されています」。 X線タルボ干渉計は、X線顕微鏡と組み合わせることも可能です。「百生研究室では、これを用いて骨の微細構造を可視化する共同研究を慶応大学等と行っています。その結果は、骨形成メカニズムのより深い理解に役立ちつつあります。また、骨粗鬆症などの新たな治療法開発にも貢献するでしょう」。 様々な可能性を多分野で生み出し始めている百生研究室のX線タルボ干渉計。研究室ではこのような他にはない独自の技術開発の種(シーズ)を産み出し、様々なニーズを持つ共同研究者と連携して、新しい可能性を拓いてきました。「今の夢は、自分の発案した種が世の中に広がっていく様を見たいということです」。4D位相トモグラフィによって撮影された接着剤の断面像。白色放射光の照射によって気泡が成長している様子が見られます。このように物体内部の変化の様子をサブ秒の時間分解能で三次元的に撮影することができ、生体試料の内部組織の運動の様子や材料の力学応答の観察など、様々な応用が期待されています。タルボ・ロー干渉計タルボ干渉計に格子を一枚追加する方法。タルボ干渉計は波の揃った光(X線)を必要とするが、タルボ・ロー干渉計は波の揃っていないX線でも機能する。これは、追加した格子がタルボ干渉計に必要となる波の揃った成分のみを取り出す仕組みとなっているため。画像コントラスト形成の機構はタルボ干渉計と同じ。非破壊検査被写体を壊さずにその内部を検査すること。工業製品や農産物の検査、荷物検査など。エネルギーバンド幅一般にX線などのビームには、ある範囲で異なるエネルギーのX線が含まれている。そのエネルギー分布の幅をエネルギーバンド幅と呼ぶ。連続X線一般的なX線発生装置で得られるX線には、特定のエネルギーを持つ特性X線と広い範囲で連続的に分布するエネルギースペクトルを持つ連続X線が含まれる。4D位相トモグラフィ最近の断層撮影法(トモグラフィ、CT)では、複数の連続した断面の画像が一挙に得られるため、これは三次元(3D)撮影とみなせる。位相コントラストを利用して高感度化したトモグラフィを位相トモグラフィと呼ぶ。さらに、この撮影を高速化して連続して撮影すれば、3D画像の動画像、すなわち四次元(4D)位相トモグラフィとなる。骨の関節部分を映し出した吸収画像と屈折画像。点線枠内拡大図内矢印に示すように軟骨表面が検出されています。TAGEN FOREFRONT 22